チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年5月24日
ウーセル・ブログ「写真記録:ジェクンドのチベタン・マスティフはどこに行ったのか?」
チベタン・マスティフは中国人富裕層のステータスシンボルとなり、その値段はうなぎ登り。最近ある1頭に何と3億5千万円!の値が付いたという。
チベタン・マスティフは昔からチベットの遊牧民の牧用犬としてチベット全土で飼われて来た。特に去年大地震に見舞われたジェクンドはこの犬の産地として有名である。
地震の後、現地入りした救助隊が人を助けずにこの犬を救助しているというほほえましい事実はかつてこのブログでもウーセルさんのブログを訳しお伝えした。http://p.tl/fzLY
ウーセルさんは今回はあのとき救出された子犬のその後の姿を目撃されたようだ。
以下5月22日付けウーセルさんのブログ、原文:http://p.tl/u50f
翻訳:雲南太郎(@yuntaitai)さん
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◎写真記録:ジェクンドのチベタン・マスティフはどこに行ったのか?
(1)2010年4月17日、ジェクンド(青海省玉樹チベット族自治州玉樹県)で撮られた写真
この時は地震3日目。私は以前、ブログに「救援隊がチベタン・マスティフを盗む(http://p.tl/bWue)、
「救援隊がチベタン・マスティフを盗む(2)」(http://p.tl/ZG7Q)という記事を載せたことがある。
ツイッターでは「ジェクンドは純血種のチベタン・マスティフの故郷と見なされていて、とても高く売れるから、よだれを垂らした人が殺到する。でも被災地でこんな事をするのはひどすぎる」と書いた。
救援活動に加わった市民ボランティアの文涛(@wentommy)(注1)はツイッターで「マスティフ泥棒がいるのは本当だ。金儲けのためにやってるんだ」とつぶやいていた。
チベット人ボランティアも活動記録の中で、「ボランティアの名を借りてチベタン・マスティフを盗む者もいるし、ボランティア組織の名を借りて資産家の財産を掘り出す団体もある……」と書いていた。
注1(@uralungtaさんより):文涛氏、大手メディアを辞めて艾未未の私設秘書みたいなことしてて4月に艾未未もろとも行方不明にされている。なんか感慨。祈釈放。
私はこの日、ツイッターに書いた。「北京国際空港に行く途中、近くの通州区の農村を通り、『チベタン・マスティフの幼犬、売ります』という看板を見た。大小のマスティフ8匹は暑さのために狂ったようにほえたり、疲れ切ったりしていた。買いたいふりをして売り主に話しかけた。すべてジェクンドのチベタン・マスティフで、最も大きいのは生後18カ月で50万元(約627万4000円)、最も小さいのはその子どもで5000元(約6万3000円)だという。それなら、大きいマスティフは地震の時まだ5カ月だ。地震後に連れて来たのかと聞くと、売り主は言葉を濁した。そして、値段交渉できるよ、もっとたくさんのマスティフから選べるよ、別の場所があるから買いたいなら案内するよ、と言った」
ジェクンドのチベタン・マスティフはどこに行ったのか?写真に写っているのはほんの一部に過ぎない。チベットを旅行すれば、どこにでもチベタン・マスティフの販売所がある。消防や国境警備、武装警察の部隊が設けていることが多い。ネットで「藏獒」(チベタン・マスティフ)と検索すれば、膨大な量の販売情報が押し寄せてくる。
補足しておくと、2008年のチベット抵抗運動の後、「元々、ペットと人の関係だった」というチベタン・マスティフ関連の文章を書いたことがある。アドレスはこちら。http://p.tl/TUhC
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)