チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年4月23日

僧侶を守ろうとした年長の男女2人が殴り殺される

Pocket

DSC_8094写真は全て、昨夜ダラムサラで行われたキャンドル・ライト・ビジルとその後の集会。

集まった人々はスクリーンに映し出された、僧プンツォの痛々しい映像やンガバの町中を行き来する軍隊や武警の姿を見ながら、顔を引きつらせ、手を合わせ、涙する人も多く見られた。

———————————————————————————————

ンガバの状況は昨日、2人の年長者が殴り殺されたことを契機に、更に緊張したものとなっている。僧院の前には昨日の夕方さらに多くのトラックが到着し、されに多くの僧侶が連れ去られるのではないかと懸念されている。


DSC_7975一方、中国当局は外部に情報が漏れる事を警戒し、昨日から、ンガバの通信網を全面的に遮断しているという。さらに、昨日のロイター通信http://p.tl/CMJXによれば、当局はンガバ州とその周辺の県、及びカンゼ州全域への外国人旅行者の入域を禁止するとの通達を出した。現在この地区に入っている外人も追い出されるという。事実を隠すためにメディアどころか外人観光客までも追い出そうというのだ。旅行制限の件(中国語)http://goo.gl/RQ1EV

昨日、政府は新華社を通じ、始めてンガバのキルティ僧院に対し「法律教育」を受けさせるキャンペーンを行っていることを認めた。これを正当化するための理由として「この僧院は問題が多く」、僧侶たちは「売春宿」に通い、「ギャンブル」にふけっているという。これほどまでに僧侶を侮辱したプロパガンダもないであろう。参考程度の日本語ニュース:http://p.tl/jU0s

DSC_8121以下一昨日の夜から始まったキルティ僧院の僧侶たちの連行に付いて報告する。この情報はいつものようにダラムサラのキルティ僧院の僧カニャック・ツェリンが伝えたものだ。チベット語が理解できる人は以下にアクセスすることで直接彼の話を聞くことができる。http://p.tl/OKiN

21日の夜9時半頃から特殊警察隊が各僧房を廻りながら、次の日の朝4時頃までに僧侶300人以上を連れ出し10台のトラック(バスとも)に分乗させ、僧院から連れ去った。行き先についてはンガバ州内のブンテン(ཝུན་ཁྲན་རྫོང་ )県、モンウン(མོང་འུན་རྫོང་)県、タシリン(བཀྲ་ཤིས་གླིང་)であろうと言われている。

DSC_8061僧院の前には12日から約200人の老人中心のグループが僧侶たちが連れ去られるのを阻止するために寝泊まりしていた。で、この動きを見た彼らはトラックの行く手に身を投出し、命がけで僧侶たちを救おうとした。これを見た特殊警察は、容赦なく彼らに襲いかかった。激しい暴力を振るい、多くの人々が手足を折られたという。1人の女性は足を3カ所折られ、悲鳴を上げると今度は声が出ないように口に服を押し込まれたという。そして2人の人が殴り殺された。1人はタウのドンコ60歳、もう1人はチャ郷の女性シェルキ65歳。2人はすぐに墓場に運ばれた。

抗議者たちはその後4台のトラックに載せられ、2台は軍駐屯地の近くに、他の2台は墓場に送られた。22日の朝、この内ほとんどの年長者は解放されたが若者の何人かはまだ拘束されたままだという。1人の若い女性が行方不明とされている。

DSC_814822日の午後5時頃、さらに5台のトラックが僧院に到着した。僧侶たちをさらに連行するためではないかと憂慮されている。

町中の店や食堂は閉められており、町には軍隊と政府の車だけが行き来しているという。

参照:ICT、22日付リリース:http://p.tl/c5hS
RFA、22日付け英語版:http://p.tl/nZCB

DSC_8163

DSC_8194

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)