チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年3月30日
ザムタンでデモ/ザゴで張り紙/カムに軍増派/ミニャックで僧院管理強化/ンガバで母親が逮捕され赤子が取り残される
チベット内地、特にカムとアムドでは1人の僧侶の焼身自殺をきっかけにまた中国政府への抗議活動が活発化しているようだ。この動きを封じ込めようと中国側も軍隊や保安部隊を内地から大挙送りつけ締め付けを強化している。
最近新たに内地から伝えられてきた出来事をいくつか紹介する。
3月23日午後4時頃、アムド、ンガバ(四川省阿壩県)、ザムタン・ゾン、ナダ・シャン(འཛམ་ཐང་རྫོང་ན་མདའ་ཞང་)のチベット人100人以上が「チベットに自由を!ダライ・ラマ法王をチベットにお招きすべきだ!チベットは(すでに)独立した!(བོད་རང་བཙན་ཐོབ་སོང་)」と叫びながら、町の中心部を3回廻った。これを見つけた軍と警官は現場に駆けつけ、平和行進を行うチベット人たちをめった打ちした。現在判っているだけでも現場で8人が逮捕された。この日から軍は地区に厳戒態勢を引き、町の出入りを禁止している。今も行進に加わった者を捜査し続けているという。(Tibet Times チベット語版 http://p.tl/cTNr)
カム、デルゲ・ゾン、ザゴསྡེ་དགེ་རྗོང་གི་རྫ་ཁོག་では3月6日(チベットの正月2日)、チベットの若者3人が町の各所に「チベットには自由が必要だ」等と書かれたチラシを張り出した。3人は氏名をチラシに明記していた。3人の氏名はツェリン・キボཚེ་རིང་སྐྱིད་པོ་、ジャンパ・ゴドゥップབྱམས་པ་དངོས་གྲུབ་(写真左)、ロプサン・トゥプテンབློ་བཟང་ཐུབ་བསྟན་。3人はその後身を隠したらしく未だ逮捕されたという情報は入っていない。しかし、当局は彼らの代わりに3人の家族を拘束し、それぞれ2万元の罰金を払うよう要求しているという。(RFAチベット語版 http://p.tl/c2LU)
カムから入った情報によれば、2、3週間前から本土よりダルツェンドを経由し多数の軍隊が新たにカム各地に配備され始めているという。その数は2008年の頃と同じぐらいで、現地では緊張が高まっている。「最近また各地で抗議活動が活発化しているので、2008年と同じようなことが起きるかもしれないと政府はみているのだろう。毎日どんどん増える軍隊の車を見て、チベット人はみんな自然に緊張している」とカンゼの人は言う。軍隊が結集しているのはダルツェンドདར་རྩེ་མདོ་、テウརྟའུ་、ニャクロンཉག་རོང་、ダクゴབྲག་མགོ་ 、カンゼདཀར་མཛེས་、リタンལི་ཐང་等である。
その他、ミニャクམི་ཉག་からの情報によれば、ミニャクの地方政府はミニャクにある僧院に対し、僧院を新築したり改装するには必ず当局の許可が必要であること、当局の許可証を所持しない僧侶、尼僧を在籍させてはならないこと、仏像も5フィート(1.5m)を越えるものを新しく具えるときには許可がいることを言い渡したという。(The Tibet Express チベット語版 http://p.tl/-jy4)
ンガバでの逮捕者の数は僧プンツォの弟を始め、現在判っているだけでも12人に上る。(RFA英語版http://p.tl/kwJY)
その中、焼身自殺後のデモに参加したとして、1人の女性が逮捕されている。その女性ツェリン・キには9ヶ月の女の子と3歳の女の子がいた。雑誌編集者であった彼女の夫は一年前に分裂主義者として逮捕され3年の刑を受け服役中。最近同居していた男性も彼女と一緒に逮捕された。家には赤子と3歳の女の子だけが取り残された。これを知った近所のチベット人たちが、拘置所に行き、赤子が取り残されているから、彼女を解放するよう要求した。この要求が聞き入れられなかったので、「では、赤子を母親の元に連れて来てもいいか?」と聞いたがこれも断られたという。9ヶ月の赤子は風邪を引き近所の人たちが病院に運び入れたと。(The Tibet Post 英語版 http://p.tl/1iW8)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)