チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年3月27日

カム、ジョンダ(江達)のブルック氏が拷問死

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DSC_6813写真は昨夜行われた追悼キャンドル・ライト・ビジルと集会。

中国の監獄で拷問、虐待を受け床に伏した勇気あるチベット人ブルック(བུ་ལུག་)氏(59)は3月25日ラサの病院で亡くなった。悲しいニュースである。
ブルック氏はカム、デルゲ、ジョムダ(江達)県(སྡེ་དགེ་འཇོ་མདའ་རྫོང་)ジガル郷(འཛི་སྒར་ཤང་)ペマゴンレ・タクチェン村(པདྨ་གོང་ཧྲེ་སྟག་ཆེན་)出身。

2009年6月、当局はジョンダ県のキャプチェ(སྐྱབས་ཆེ་དགོན་)僧院で愛国再教育キャンペーンを行った。教育班はいつものように僧侶たちにダライ・ラマ法王を非難する書面にサインするよう強要した。しかし、僧侶たちは1人もサインしなかった。その上、僧侶たちは僧院から逃げ出し、一ヶ月間僧院は空となった。


DSC_6857ブルック氏と共に逮捕され刑期を受けた他4人。この写真の中ブルック氏は赤い矢印で示してある中央下。

その時、地域の武装警官隊と公安は僧院を完全に破壊すると脅した。この脅しが何の効果も無いと知るや、今度は村のチベット人代表たちに僧侶を僧院に返すよう命令した。しかし彼らは「僧侶たちは自分たちの意思で逃亡したのであり、また我々は彼らの行方も知らないし、命令することもできない」と返答した。この返答にいらだった中国人の役人たちは彼らに暴力を振い、逮捕したという。町のリーダーであったブルック氏は他4人とともに2年の刑期を言い渡されコンボ、ニンティにあるポオ・タモ刑務所に送られた。彼の刑期はその後3年延長され、計5年の刑をなった。

DSC_6977(この部分RFAチベット語版http://p.tl/yLvEではブルック氏は町のリーダーではなく、拘束されたリーダーたちを解放するよう要求に行った町の有志グループの1人とする。上の情報は昨日集会で渡された英文による)

ブルック氏は拘置所や監獄で様々な虐待を受け、去年から彼の容態は悪化していたという。しかし、監獄側は家族や親戚の訪問を決して許さなかった。

今月24日にはいよいよ彼は危険な状態になった。監獄からラサの病院に夜遅く運び込まれたが、次の日25日の午後、彼は死亡してしまった。

DSC_6960拘置所や監獄での拷問により死亡するというケースは後を絶たない。拘置所や監獄で治療を受けることはまれである。また、もし酷い拷問や虐待により死にそうになったときは、責任を逃れるために、死ぬまでに外に出され、家族の元に送り返されたり、病院に運び込まれる。外で死亡すれば、彼らには責任が及ばないことになっているからだ。

DSC_6927昨夜ダラムサラではブルック氏を追悼するために政府外5団体主催のキャンドル・ライト・ビジルと集会が開かれた。

ブルック氏の死により妻と6人の子どもが残された。

DSC_7001キャンドルの向こうにはチベット語で法王作の「真理の言葉(ツェメーユンテン)」の一節が書かれている。

「仏法とそれを守るサンガ、国と国民のために
何よりも大切な己の命や財を投げ出し
千万の苦を耐え続けし人々が
ポタラの王の慈悲により守られますように」

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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