チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年3月26日
チベット中央(亡命)議会は一転、ダライ・ラマ法王の政治的引退を承認
昨日25日は議会最終日であった。これまで2度に渡り議会は法王が提案された「政治的権力からの完全引退」に対し、NOという結論を出していた。数日前には1人を除き全員が反対していた。法王は法王でこの議会の決定を知らされた後、「もう一度よく考えるように。これは長期的にチベットのためになることだ」と引退の意思を曲げられなかった。
そこで、再び議会で票決が取られたが今度は全員一致でYESとなった。
このプロセスを見ていると、何だか日本でもよくある、人から貰い物を頂く時、「いやいやこんなたいそうな物は頂けません」「まあ、そういわず、受け取ってほしい」「いえいえ」「まあまあ」と品物を畳の上で押し合いながら、最後には「そんなに言われるなら。まあ、頂いておきましょうかね・・・」となる情景を思い浮かべてしまった。
昨今中東辺りで見かけるものとはまるで真反対の風景である。
で、議会は延長され、亡命チベット人憲章(憲法)改正に向けて内閣・議会合同の特別委員会が設立された。この委員会は法律専門家等の意見も聞きながら、4月11日までに改正案を作成し、議会に提出するという。
しかし、これが最終案になるということではない。議会は昨日、さらにもう一つ「第2回チベット人全体会議」の招集も決定した。この「全体会議」は第1回会議が2008年の秋に法王の発案により「中道か、独立か」を決定するために開かれた。今回は委員会や議会の発案を受け、さらに法王の政治的引退に関し討論を行う。これは5月の第3週目に行われる予定。
本当の最終結論はその後再び招集される「特別議会」によりなされるという。
この特別会議の前にはすでに新しい首相と議員が発表されている。この会議でその人たちの意見も取り入れようというつもりらしい。何れにせよ、最終結論は今の議員たちの5年任期が終わる5月末までには出されることになっている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)