チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年1月24日
中国当局の脅迫が僧侶を自殺に追い込む/若者がチャットを理由に2年の懲役刑
1月19日付けphayul.comより。http://bit.ly/dMqFU3
VOT放送に、現地から連絡を受けたダラムサラ在住のチベット人が伝えた情報によれば、昨年11月15日、チベット自治区ナクチュ地区ソク・ゾン(索県)で1人のチベット僧が僧房で首つり自殺したという。
ティド郷、ダデル僧院の僧ロプサン・パルデン(48)は11月15日僧房で天上の梁に紐を掛けて首をつり、死んでいるのが発見された。
彼は2007年にインドを訪問し、その時ダライ・ラマ法王の謁見を受けていた。地区の宗教局の役人はその事で何度も彼に嫌がらせと脅しを繰り返していたと、現地からの匿名希望のチベット人は語る。中国当局はチベット人指導者ダライ・ラマ法王のことを「分裂主義者」とか「僧衣を纏った狼」と罵っている。
情報によれば、彼の死の数日前宗教局の役人は彼を4、5時間尋問したという。
さらに、「彼は役人から僧院から追い出すぞと脅されていた。僧侶たちが遺書を見つけた」と伝える。
ロプサンは僧院と町の発展、啓発活動の幾つかを先導していた。そのこともあり、彼は地元のチベット人たちから愛され、尊敬されていた。ロプサンの死は地元のチベット人たちを驚かせ、彼らはその死を深く悼んだという。
ロプサンの事を良く知る地元のチベット人によれば、彼は僧院の中でも特に皆から非常に愛され、尊敬されていたという。ティド郷の幾つかの家族が率先して彼の葬式を行った。
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もう一つ、同じ情報元が明らかにしたところによれば、同郷の若いチベット人が、中国政府がいうところの「外の分裂勢力」との関係により2年の懲役刑を受けたという。ケルサン・ノルデンというこの若者は2009年に中国の人気チャットウエブサイトであるQQ.comを使ったとして「分裂主義者的行動を取った」として逮捕されていた。彼がコンテンツの中に中国政府が禁止しているダライ・ラマ法王の写真等を載せていたかどうかは分っていない。
2009年10月には、同じソク・ゾンで3人のチベット人がQQ.com上のプロフィールの中にダライ・ラマ法王の写真とスピーチを掲載したとして逮捕されている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)