チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年1月12日

中国の人権派弁護士高智晟氏が受けた凄惨な拷問・今彼の命が危ない!

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75af09e9.jpg中国の人権派弁護士高智晟氏はこの数年、何度も中国当局による激しい拷問を受けている。
彼は去年4月以降行方不明になったままであり、その安否が非常に心配されている。

AP通信は1月10日にそれまで隠していた彼とのインタビューを公表した。
この件に関し、日本の共同通信も短く報じている。
<中国の人権派弁護士「拷問受けた」と告白 警官が交代で殴打?>
http://sankei.jp.msn.com/world/china/110111/chn1101112352008-n1.htm
表題の最後に「?」が付けられているのには笑える!

一般には中国の有名な反体制知識人や弁護士、作家などが激しい拷問を受けるということは稀である。これは彼らには発信能力があるからであり、当局は後に彼らにより拷問の事実などが発表されることを恐れるからだ。
この点、チベット人やウイグルの人の場合には、その発信能力は限られていると思われる事により、激しい拷問も平気でほぼ全ての政治犯に対し行われる。

ただ、高智晟氏の場合は例外的に酷い拷問を確かに受けている。これは彼が法輪功や地下教会を擁護した事に関係すると思われる。

以下に訳したのは、APの発表を受け、RFAが高氏の妻耿和さんにインタビューしたという記事である。

これももちろん読んでほしいが、特にもう一つ読んで欲しいのは最後に参照としてURLを紹介するブログ「思いつくまま」で翻訳されている高氏自身が報告する拷問の事実だ。
これは彼が2007年9月21日から50日間に渡り受けた激しい拷問の記録である。
私はチベット人からこれと同じような話を何度も聞いているので、彼の証言を100%信じることができる。

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<胡錦濤のアメリカ訪問を前に反体制活動家の苦境が雲となる>

1月10日付けRFA英語版:http://www.rfa.org/english/news/china/torture-01102011185955.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter

民衆の利害を擁護する権利弁護士に中国警察は拷問を行ったという報告が発せられた。

夫が警察に拘束されている時、激しい拷問を受けていたという報告が発表されたのを受け、行方不明中の中国の著名な市民権利擁護派弁護士の妻は、夫の窮状を訴えるために胡錦濤がアメリカ訪問中にワシントンに行く事を計画していると語る。

中国内でもっとも迫害を受けやすい人々を擁護し、政治改革を訴えて来た高智晟氏は2009年2月に行方不明となり、2010年3月短期間姿を現し、友人や仲間にその間の事情を短く語ったが、その後再び現在に至まで消息不明のままである。

AP通信社は月曜日(1月10日)、この僅かな解放時期である去年4月に北京で高智晟氏に接触し行ったインタビューを発表した。その中で高智晟氏は中国警察から受けた拷問について語っている。

警官は高氏を裸にし、拳銃で激しく殴った。APは「2日間昼となく夜となく、交代に彼を殴った。彼が口に出せぬような行為を行った」と言う。

「3人の警官は疲れると、彼の手足をビニール袋で縛り上げ床に放り投げた。そうしておいて、自分たちの息の整うのを待って再び始めた」

高氏は彼が再び行方不明になるか、或はアメリカやヨーロッパなどの「安全な場所」に行くことができない限り、この証言を公にしないようにと要請していたという。APは「彼の失踪が長過ぎるので」この証言を公にすること決定したという。

<計画段階>
現在カルフォルニアに子どもたちと一緒に暮らす高氏の妻耿和は、月曜日RFAのインタビューに答え、「胡錦濤が来る18~21日に合わせ
ワシントンに行き、オバマ大統領とホワイトハウスで会見し、政府主催の晩餐会に参加するという計画がある」と語った。

彼女はこれはまだ「計画中」であるとして詳細については明らかにしなかった。

彼女はAPの報告に愕然としたという。報告の中には、拘束者は彼をベルトで縛り上げ16時間不動で立ち続けることを強要し、彼に子どもたちも精神に異常を来しているぞといい、お前を殺して川に沈めてやると脅した、とある。

2009年9月には高氏を苦しめる者は彼に「自分を人間だと思う気持ちを捨てろ。お前は獣だ!」と言ったという。

「48時間の間、私は命の危険に晒されていた。言い表す事ができないくらいの残酷さだった」
「3月に終わった耐え続けた14か月に及ぶ拘束期間中、その暴力が最悪だった」と。

妻の耿和はRFAに対し「詳しく聴いたのはこれが初めてだった。夫は話てくれなかった・・・話せなかったのだろう・・・どんな拷問にあったのかは」と泣きながら話した。

<歪んだ歯>
彼女は2010年4月につかの間解放されたとき発表された、明らかに拷問の跡の残る夫の写真を思い出した。

「写真から彼がひどい拷問を受けた事が分った。電話で話をした時、私は彼に『写真を見ると貴方の歯が曲がっていることが判るわ。歯を見てもらいなさい』と言ったが、彼は何も言わなかった」

「彼が再び消えた後、私は父に高はどうしているのか?と聞いた。父は『色々聞くな。お前は子どもの面倒を見ていればいいのだ。彼が生きて帰って来ただけでも非常に幸運だと思いなさい』と言われた」

耿和は「中国の人権状況は良くなるどころか悪くなっている」と言い、監獄でひどい目に遭い去年12月に死亡した他の活動家力虹(*1)の例を持ち出した。

彼女によれば、高氏は何度も刑務所に送ってくれと当局に頼んだが、それも許されなかったという。

「彼にとって一般の刑務所に行くことは贅沢なことなのだ・・・彼らは夫を秘密の場所に監禁して置きたいのだ。好きなことができるから。本当に心配している。深く心配している」

「私はいつも彼のことを考えている・・・私たちの息子は・・・夜中に泣いて目を覚ます・・・『どうしたの?』と聞くと息子は『お父さんの夢を見た』という。このようにして私たちはいつも父親のことを心配している・・・手を握り合うことができない」

<憂慮を示す>
耿和は高氏の安否を中国政府に質すよう各国政府、国際機関や友人に訴えている。高氏の娘である耿格17歳は去年11月にソウルで行われたG20サミットの期間中に胡錦濤に対し行方不明中である父親高氏の件について質してくれるようにとオバマ大統領に直接訴えた。

「もしも、中国政府が私の父親を殺害したのなら、胡錦濤に対し彼を埋葬する許可を取ってほしいとオバマ大統領に懇願する」と娘はその公開書簡の中に記している。

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*1:本名「张建红」反体制活動家、作家。2007年に6年の刑を受けていたが去年病気を理由に解放。その後、約6ヶ月後の2010年12月31日死亡。刑務所内の拷問が原因と思われている。法輪功関係か?http://t.co/IN4BfgT

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ブログ「思いつくまま」より
<高智晟:中国の「友人」と「パートナー」への呼びかけ (いま彼の命が危ない!)>
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/4ee3e4fde401995b8698c5159a7fc370
必読!(少々長い)

その他2006年アムネスティー報告
<人権擁護活動家=高智晟[こうちせい]さん一家、身の危険・死の脅迫>
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=208

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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