チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年11月22日
RFAより、最近ラサで起こった事件。
チベット内地からは最近、大きな衝突のようなニュースは入っていないが、だからといって中国のチベット人に対する弾圧が緩められたという訳ではない。
最近RFAに内地から伝えられた、ニュースをいくつか紹介する。
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<ポタラの裏、コルラの最中に抵抗の声を張り上げたチベット人がめった打の末逮捕される>
最初の話は今月であるが、日付は判っていない。
ラサのポタラをコルラ(右遶)することは、今でも多くの信心深いラサ市民や巡礼者の日課となっている。
ある日の夕方、ポタラの裏あたりをコルラしていた一人の男性が、突然両手を振り上げて、「チベット独立!ダライ・ラマ法王に長寿を!」と声を張り上げたという。
同じくコルラを行っていたチベット人たちはこの姿を見て、驚き、中には涙を流す人もいた。
しかし、数分もしないうちに警官隊が彼を囲み、すぐにみんなの見ている前で彼を滅多打ちにした。
それは凄まじい暴力であり、周りのチベット人たちは声を上げ非難した。
彼は半死状態となり、引きずられて車に乗せられ、どこかに連れ去られたという。
(昨日のRFAチベット語放送より)
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<五体投地の巡礼者を助けるチベット人、排除しようとする警察>
チベットは冬に向かい、農閑期となったカムやアムドの田舎からラサに巡礼に来る人が増えている。
その中でも何ヶ月もかけて五体投地を続けながらラサまでやって来た巡礼者に対して、また、その中でも大地震に見舞われたケグド(ジェクンド 玉樹)からやってきた巡礼者に対し、ラサのチベット人たちは彼等を篤くもてなし、家に泊めたり、食料を与えたり、マニリブ(法王が加持を与えたとされる小さな万能丸薬)を与えたりしているという。
しかし、ラサの公安や警察はこのような巡礼者に対し、分けもなくつらくあたり、ジョカンの周りを五体投地するものを見つけるとすぐに追い出すという。
最近、ジョカンのパルコルでそのような巡礼者を労っていたチベット人を見つけた警官が彼等を乱暴に追い払い、その巡礼者の写真を撮っていた台湾人を捕まえどこか連行していったという。
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<カンゼ出身の3人のチベット人が連行される>
最近、ラサで露天商を営んでいたカム、カンゼ出身の商人2人と僧侶1人が、突然その店に現れた警官に拘束され、連れ去られたという。
それを目撃したチベット人がRFAに伝えたものだが、彼はおそらく彼等はグツァ拘置所に送られていると思う、と話ているが、はっきりとした行方は不明のままだ。
また、なぜ彼等が連行されたのかも判っていない。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)