チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年11月17日

アウン・サン・スー・チーさんの開放後最初の演説

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57ff0f30.jpg写真AP

2日前に古巣のダラムサラにやっと帰って来た。
今日までネットが復旧せずブログも更新することができなかった。
幸い、この間、チベット本土では大きな事件のようなことは起こっていなかったようだ。

カンボジアを発った14日、ビルマのアウン・サン・スー・チーさんが長かった7年間の自宅軟禁からついに開放されるという嬉しいニュースが入っていた。
BBCでもインタビューに答える元気な彼女の姿を見る事ができ、私は非常に喜んだ。

法王もさっそく彼女の開放を喜ぶメッセージを発表され、ビルマの民主化に対する全面的な支援と連帯を表明された。
http://dalailama.com/news/post/620-message

BBCとのインタビューの中で彼女は何度も自分が目指すものはVelvet Revolution(1989年チェコで行われたビロード革命)だと語っておられた。
「Revolution」という言葉を使う彼女に対し、BBCのインタビュー者も「そのように語る事で再び当局に拘束されるという恐れは無いのか?」と問うた。
「その可能性は否定できないが、私は率直に語るだけだ。私は今の政府をひっくり返すのではなく、その体質、性格が変わってほしいと思っているだけだ」と話されていた。

以下は彼女が開放された後に行った最初の演説である。

———————————————————–

スー・チーさん演説全文
http://www.asahi.com/international/update/1115/TKY201011150042.html
http://www.asahi.com/international/update/1115/TKY201011150042_01.html
http://www.asahi.com/international/update/1115/TKY201011150042_02.html

自宅軟禁から解放されたミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんが14日に最大都市ヤンゴンの国民民主連盟(NLD)本部前で行った演説は次の通り。

     ◇

 このように集まって支援してくれていることに最初にお礼を言ってから、話を始めたいと思います。皆さんお久しぶりです。しかし、どれだけ会えなくても、(国民と私の間に)お互いに慈しみの心や信頼感がしっかりとあったということを確認できてうれしく思います。とても力になります。

 国民の皆さんが何を期待しているかを私は知っています。期待していることをどうやったら実現できるかを知ることが重要です。私の考えでは、政治とは「習得する」ことです。

 若者たちと話をする時に、私は悪い若者とか良い若者とかといった区別はしません。優等生と劣等生という区別も信じません。習得できる人と習得できない人という区別があるだけだと思っています。私たちの国の人々は習得をできると信じています。

 期待するだけでは何もできません。期待することを実現するためにどうしたらいいか。実現する際にも正しい方法で行動する必要があります。

 正しい方法で行動したいというのはなぜかというと、自分が聖人になりたいからではありません。私の経験から言って、正しい方法で行動しなければ目標が正しいものではなくなってしまうからです。だから、正しい方法で自分が実現したいと思っていることを実現しなければなりません。

 私にたくさん質問をしたいという人がいることを私は知っています。私も人々の声を聞きたいと思っています。難しいのは皆さんが口々に叫べば、何を言っているかわからなくなってしまうことです。私は皆さんの声を聞けるようになることを期待しています。

自宅軟禁に置かれた際にも、私は(ラジオやテレビの)放送をしっかりと聞いて、国民が何を言っているか、国民が何を必要としているか、毎日確認してきました。1日に5、6時間も耳を傾けなければならないのは、つらいことです。しかし、国民のために聞き続けてきました。そのように聞き続け、国民がどのような生活を強いられているかということを理解してきました。

 ただ、すべてはわかりません。私は国民の皆さんにも私に聞こえるように話をしてほしいと思います。それによって、私は何をするべきかを考えることもできます。

 国民が参加しなければ何も実現できません。それは皆さんもわかっていると思います。国民が国民のために民主化を実現する、それは私の国だけではなく世界中に広がってほしいことです。そういう考えに基づいて、私たちは努力します。私が掲げる目標を平和的に正しい方法で実現できると信じています。

 やらなければないことはたくさんあります。行動しなければ何も得ることはできません。

 私たちミャンマー人は、何でも「これは運だ」と考える傾向があります。私は若い世代にも何回も言ってきました。運という言葉の意味を知っていますか。運というのは行動に基づくものです。運と言っても、自分がやったこと以上にはなりません。

 得るべきものがあれば、行動しなければなりません。「実現不可能なことを実現します」と簡単に約束することでは国民をまとめることはできません。

 私たちは努力します。国民が向かうべきところに行く道をみんなで造っていきます。道を前に進めるように努力したいと思います。私たちは民主主義の目標にたどり着く道をみんなで造り、みんなで一緒に歩いていきます。この方法でこそ、私たちの目標は実現するのです。

 ほかの人がしてくれるのを待っていては駄目です。私たちは無理やりやらせるつもりはありません。皆さんが自ら参加することで実現するのです。

 このように皆さんがここに来て支持をしてくれるのは、私に期待しているからだということはわかっています。そのような期待を背負うのはとても重いことです。しかし、私はその責任を恐れません。恐れるのは責任を果たせないということだけです。責任を果たすために努力します。

 その際、国民の皆さんも私にアドバイスをしてください。力を貸してください。指摘すべきことがあれば指摘してください。正しく指摘すること、真心から指摘することは非常に助けになります。指摘してくれることで、私たちと国民が必要としていることを実現するための助けになります。

 ここで私は国民の皆さんにお願いがあります。私たちとは、正直に何も恐れずに接してください。私たちに何を言ってくれても構いません。言いたいことを伝えてください。私と意見が違ったときには私は反論します。これが民主主義の基本である言論の自由です。言論の自由というのは勝手に文句を言い合うことではありません。

 時には少し声を張り上げることもあるかもしれません。しかし、お互いが理解できるよう話すことがとても重要なのです。お互い意見が一致していても、そうしたことを訓練する必要があります。訓練することでできるようになるのです。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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