チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年11月9日
11月7日と8日、カム、ザチュで僧侶を中心に1000人以上のチベット人が、純粋なチベット語を守るための抗議デモを行う
11月8日付けTIBET TIMESチベット語版によれば、
http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=3607
11月7日早朝3時頃、カム、ザチュ(ザチュカ、རྫ་ཆུ་)にあるセルシュ僧院(སེར་ཤུལ་དགོན་པ、ゲルク派)ツェンニー(མཚན་ཉིད་གྲྭ་ཚང་ 論理・哲学)学堂の僧侶50人ほどが「民族には民族言語使用の自由がある」などの横断幕を掲げ、セルシュの町に向かった。
再び8日の朝6時、同じ僧院の僧侶に尼僧も加わった約700人が町にある県庁舎に向かったが、セルシュの町の手前で駆けつけた警官隊に阻止された。
同日さらに、ザチュ、ブンニン(འབུམ་རྙིང་、本寧)にある2つの僧院の僧侶と一般市民約300人が「我々はそれほどまでに蔑視されたくない!なぜ、自分たちの言語を自由に使う権利がないのか!」と叫びながら、セルシュの町に向かった。
彼等も、警官隊により町に入る事を阻止された。
このような抗議運動に至った主な原因は、2008年からこの地域で始まった、ある運動が関係しているといわれる。
地区ではチベット人がチベット語を話す時、中国語を交えて話すことを禁止するという「純粋なチベット語を話そう運動」が起こっていた。
この提案は僧侶、一般市民から支持されていた。
各僧院や食堂には、これに違反した者から1回ごとに1元ずつ徴収するための罰金箱が置かれていた。
しかし、10月26日に県の幹部役人が僧院を視察し「『混じった言葉を話したら罰金』のような決まりを作ることは認められない」と命じ、罰金箱も無理やり押収した。
その後、指導僧らが何度も県の役所に通い正当性を訴え、罰金箱を取り返そうとしたが聞き入れられず、今回の抗議デモの発生を促すに至ったのだと、この事件を伝えた南インド、セラ僧院の僧ザケ・プルバ(རྫ་སྐྱེས་ཕུར་བ་)はコメントした。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)