チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年10月28日
『民族を滅ぼすにはまず言葉を滅ぼさなければいけない』ウーセル女史のブログより
写真は10月20日に行われた、海南チベット族自治州チャプチャ(共和)の学生デモ。
このデモの中心になったのは第一民族高校の生徒たちだった。
横断幕には漢字で「我々はチベット語授業を必要とする」と書かれている。
(写真はすべて24日付ウーセルさんのブログhttp://woeser.middle-way.net/ から)
この日の彼女のブログによれば、この学校は学生数2362人のマンモス校であり、周辺の州からも学生を集める、有名な優秀進学校であるという。
昨日お伝えした、甘粛省甘南チベット族自治州サンチュ(བསང་ཆུ་རྫོང་、夏河県)ツァユ(ཙཱ་ཡུས་)のデモは主に小学生によるものであったという。
26日のデモは小学生だけ、27日のデモには教師も加わり、1000人以上の住民が声援を送ったそうだ。(VOT)
この子供たちのデモを応援するために大人も様々な動きをしている。
その中、亡命チベット人作家27人が連名で青海省政府の教育庁宛に
チベット語教育は「民族の存亡に関係する」というアピールを行った。
その内容は27日付けのウーセルさんのブログの中国語を読んでもらうこととして、その導入部としてウーセルさんが書かれた文章の訳を以下紹介する。
原文はhttp://woeser.middle-way.net/2010/10/27.html
翻訳は@yuntaitai さん。
ウーセルさんは「アピール文」をブログへ掲載するのが遅れたことを詫びながら・・・
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ラサ滞在中の私には、ネットが切れたり繋がったりいろんなトラブルがあり、ブログも更新できない。
最近は影のように見知らぬ人や車がつきまとっている。
何れにせよ、言葉は民族の存亡にかかわる大問題で、アピール文が指摘している通りだ。
「『民族を滅ぼすにはまず言葉を滅ぼさなければいけない』と言われるように、もし民族の言葉と文字に幼稚園から触れられないなら、すぐに言葉は社会にとって無用で、生活の助けにならないものになり、ゆっくりと消えていくだろう。
言葉がなくなれば民族の文化に魂はなくなり、魂のない体は生ける屍で、この民族は滅亡したと言っていい。
だから、今回のデモに加わったチベット人学生と多くの市民、この事に関心を持つ人たちは民族の文化を心配しているのだと私たち(作家27人)は信じている。」
言葉のもう一つの大事な役割は歴史を伝えることだ。
民族の根っこは言葉によって存続してきた。
言葉が歴史を書き記すことで、民族は記憶を持つことができ、民族になれ、自分たちの文化とアイデンティティーを持てる。
これが「民族を滅ぼすにはまず言葉を滅ぼさなければいけない」と言われる理由だ。
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先ほど(28日夕方)のVOT放送によれば、26日、青海省西渚ナでもチベット人学生約100人による、新教育政策に反対するデモが行われたという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)