チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年9月9日
ダラムサラに中国のスパイが!?
今日「ダラムサラに中国のスパイが」というニュースが日本語でも出ていた。
「ダライ・ラマの警備強化 印に中国情報員潜入か」
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010090801001205.html
【ニューデリー共同】PTI通信によると、インド北部ヒマチャルプラデシュ州の警察当局者は8日、チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラに中国軍の複数の情報機関員が潜入している可能性があるとして、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の安全確保のために警備対策などを強化したことを明らかにした。
警察当局者によると、チベット亡命政府から情報が提供され、対策を取るよう要請されたという。
警察はダライ・ラマに対し、訪問者との面会などの際にも注意をするよう忠告した。
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で、これを少し詳しく伝えた8日付phayul の記事があったので、以下これを要訳してお伝えする。
「チベット中央(亡命)政府は中国諜報員の侵入を警戒」
7日付PTI通信によると、ダラムサラに軍部により訓練された中国の諜報員が潜んでいる可能性があるとして、亡命政府側の保安部はインドの保安・情報部に対しダライ・ラマ法王の警備の強化を要請した。
レポートによれば、これはダラムサラだけでなくインド内のチベタンキャンプ全域を対象とし、「僧衣を着た中国のスパイ」が潜入している可能性があるという。
ダラムサラの地方警察はインド外務省に対し、ダライ・ラマ法王の住居周辺を守るため、「化学物質検知装置」を設置するための予算を要求した。
現在、法王の住居を守るために150人による、三重の防御網が引かれている。
(注:これは住居を囲む鉄条網の外側と中側を守るインド警備隊、及び直接身辺を守るチベット人の護身隊)
レポートによれば、この警備強化に至るには幾つかの伏線があったという。
まず、2か月前Chai Sha Hungという中国人女性がマクロード・ガンジ(ダラムサラのチベット人街)で正規の旅行証を持っていなかったとして逮捕された。
インド警察は彼女をスパイと疑ったが、証拠を上げることができないまま彼女は先月中国に送還された。
亡命政府防衛省の高官は「中国政府はオリンピックの前にチベット全土で起った抵抗運動の後、チベット人に対する警戒心を強めている」と語る。
2008年、抵抗運動が起こる以前にもLiu Xiaという中国人がダラムサラの地方警察により逮捕されている。
彼はかつて人民解放軍に所属しており、2008年以前、2度ダラムサラに来ていた。
インド情報局が驚いたのは、彼の携帯電話を調べると、彼がラサにいる軍高官と連絡を取り合っていたということだった。
彼は不法に陸路チベットからネパールに入りインドのデリーに至っていた。
亡命政府の警戒心の高まりに従い地方警察は新しく亡命してきたチベット人たちへの監視を強めている。
チベット保安部の高官は「すべてのキャンプの福祉事務所に対し中国人僧侶がスパイとして送り込まれている可能性について人々に知らせるよう指示を与えた」と語った。
警察当局はダライ・ラマ法王に対し、新しく亡命してきた人々との謁見の際には距離を保つようにとのアドバイスを与えたという。
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これを読んだだけでは、なぜ「スパイは僧侶の姿を取っている」と断定的に言っているのかは明らかではない。
ま、この辺は秘密の情報も多いと思われるので、どこかからそのような情報が入ったのであろう。
法王は何度も「我々には隠すものは何もない。中国のスパイは大歓迎だ。ちゃんとここにきて事実を調べてもしい」とおっしゃっている。
中国がダライ・ラマは病んでいるというデマを流した時には「ここにきておしっこも調べてほしい」などと言われたこともある。
であるが、今回このような警告が発せられたということは、何か「法王の身に危険が及ぶ」ような事態が想定される情報が入った可能性があると思われる。
だいたい今までの警備は、甘すぎると言われても仕方ないぐらいだったから、これで法王との距離ができてしまうかも知れないのは残念だが、少しは正常になると思うことにしよう。
何事もないことを祈る。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)