チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年8月19日
中国の大災害は一般人に情報取得の権利がないから
今日はRFAの中国語版より。
http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/wang-08182010100950.html
王維洛博士「一般人に情報取得の権利があってこそ、更なる大災害は避けられる」
(U女史訳)
2010-08-18
ドイツ在住の環境問題専門家王維洛博士は、中国の舟曲・ブン(さんずいに文)川の土石流被災地区の被災者救援、及び更なる災害発生の回避における最も根本的な問題は、一般人の情報取得の権利、自己の生存に関する情報を理解する自由な権利にあると語る。
ドイツから、RFA特約記者・天溢由記者が伝える。
最近、欧州各地のメディアは中国舟曲、ブン川等で発生した土石流等の災害や、それらに対する中国政府の哀悼、救援等の情報につき重点的に報道している。
この夏及びここ数年、中国で次々と発生し膨大な死傷者を出している自然災害が、欧州の一般人にとって理解を超えるのはなぜなのか?
記者はドイツ在住の著名な環境問題専門家・王維洛博士に取材した。
博士は記者に対し、まずこう語った。
「今回の舟曲地区、ブン川地区における災害では、土石流や地滑りで膨大な人的・物的被害が出ており、その原因や救援方法に対する関心が高まっています。
しかし救援の前に重要な前提条件があります。
つまり、自分の住んでいる土地の地理環境や、そもそも自分がどんなところに住んでいるのかについての居住民の理解です」
王博士は解説する。
「例えばドイツに住んでいる人は、本屋へ行けば地形図が手に入ります。
買いたくなければネットで検索することも可能です。
しかし舟曲の災害に関する今回の報道で提供された何点かの(現場)写真や衛星写真から分かるのは、この場所がそもそも地滑り地形で、町を建てるのには適さない場
所だということです。
人の住む町を作るのに適さない地滑り地形の上に発展したのが舟曲の県都なのです。これはブン川も同じで、ブン川で新しく建てられた居住区も、本来川の道筋だった谷に建てられているのです」
なぜこのような、理解に苦しむ事態が起こるのか。
「中国の等高線図は国家機密です。
油井の位置(に関する地形図)を買ったアメリカの地質学者が、中国政府から10年の判決を受けたこともあります。
彼の罪状は中国の機密資料の所持でした。
こうした地形図は、前にも述べたように、他の国では一般市民皆が購入可能なものであり、機密でなどありえません。
こうした地形図を手に入れることすらできなければ、自分の周囲の環境がどうなっているかを把握できず、どこが災害に遭い易いのかを知ることもできないのですから」
博士はこう締めくくった。
「一般人に情報取得の権利が必ず認められるべきです。
中国の地形図が永遠に機密資料であり続け、一般人が入手できなければ、今回は舟曲、前回は玉樹、そして次はどこの人々のために半旗が掲げられることになるのでしょうか」と。
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おまけに超可愛い映像を二つ:
(これもU女史が教えて下さったもの。今日は他力本願のみ)
<五体投地するチベタン・ベイビー>
<チベット難民ベイビールーム>
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)