チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年8月18日
カルマパの写真が没収された
8月17日付RFA英語版
http://www.rfa.org/english/news/tibet/photos-08172010130131.html
チベット内地から寄せられた情報によれば、中国当局はチベット内でカルマパの写真を掲げることを禁止し、僧侶たちから写真を取り上げ、ドライバーには車の中にカルマパの写真を掲げないようにと警告しているという。
チベット仏教カルマ・カギュ派のトップであり、チベットでもっとも高位なラマの一人であるカルマパは2000年にチベットからインドに逃れた。彼はその時以来、亡命社会に暮らし、チベットの精神的指導者であるダライ・ラマに近い存在と見なされている。
チベットから最近ネパールに来た、あるチベット人は「去年、チャムド地区のシャンコウのチベット人たちはカルマパ・リンポチェの写真を保持しないようにと命令された」と伝えた。
彼はさらに、「以前から、チベットの様々な地区でカルマパの写真を保持することが禁止されている」
「ラサ近郊のルグックで、複数の僧侶が首にお守りとして下げていたカルマパの写真を警察が取りあげた」
「ダライ・ラマがカルマパの事を尊敬すべき高僧と呼んだことで、チベット人たちはチベットの将来について彼に期待している」と語った。
<禁令は驚きだ>
別の1人の情報によれば、チベットではドライバーたちの多くが20代半ばのカルマパの写真を車に掲げているという。
彼は「ドライバーたちに対し保安当局は決してカルマパの写真を掲げないようにと命令した、と私は聞いている」と話た。
コロンビア大学のチベット学の学者であるRobbie Barnett氏は、この禁令は「驚きである。なぜならば、中国のオフィシャルな見解では“カルマパはいつでもチベットに帰ることができる”というものだからだ」とコメントする。
「二つの方針があるとしても驚くに当たらない、“カルマパは帰ってくることができる。我々は公に彼を非難しない。しかし、写真を持つことは許さない、と言う訳だ」
「私的保持は許すが、公的掲示は許さない、というのではなかろうか。写真を取り上げられたというのは地域の役人たちの判断に依るものと思われる」
「しかし、これがラサで、しかも複数の場所で起ったとすれば、それは何かもっと重要なサインの現れと見ることができよう」とBarnett氏は語った。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)