チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年6月13日

ジョンダ(江達)県ワラ僧院僧侶3人逮捕

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ee838b58.jpgRFA:http://www.rfa.org/tibetan/chediklaytsen/khamlaytsen/kham-stringer/china-arrested-three-monks-from-wara-monastery-in-kham-06112010111119.html

Phayul:http://phayul.com/news/article.aspx?id=27482&article=3+Tibetan+monks+arrested+in+Chamdo’s+Jomda+County

以下6月12日付Phayulの訳。

ダラムサラ:ボイスオブチベット放送によれば、中国当局は今月7日、チベット自治区チャムド地区、ジョムダ(江達)県タンプにあるワラ僧院の僧侶3人を逮捕した。

県の公安は、2008年と2009年に起こったデモの再調査を行ない、僧侶たちを尋問のため県の公安本部に呼びつけた。
嫌疑は2008年、2009年の抗議デモを扇動し、先導したというもの。
尋問の結果、ケルサン・ダルギェ(32)、タシ・ルンドゥプ(22)、タシ・ワンドゥ(35)の3人が6月7日、逮捕された。

当局は先月、同じ僧院の僧侶6人を逮捕している。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51453231.html
ティンレー(25)、ナムセ(27)、スゴン、ケルサン・ギュメは5月15日に逮捕され、ソナム・ゴンポ(40)とタゲル(29)が翌16日に逮捕された。

これとは別に今年の3月、ジョンダ当局は2人の僧侶を逮捕している。
容疑は「チベット蜂起51周年記念日」に当たる2010年3月10日、政府車両に火を付けたというもの。

2008年4月3日、ジョンダ、ワラ僧院の僧侶たちは押し掛けて来た中国政府の「再教育キャンペーンチーム」と対峙した。
この時、僧侶たちは「死んでも我々のリーダーであるダライ・ラマ法王を非難などしない」と宣言し、「再教育」されることを拒否した。

———————————————————————

中国政府当局は、逆らう者にはすぐに「国家分裂(転覆)罪」とか、その「扇動罪」とかの名を付け、彼らを拘束・拷問・監囚する。
時にはその場で銃殺する。

一体、本当は誰が治安悪化を扇動しているのか? ちょっと考えて見るといい。
おおもとの話をすれば、チベット人がそこで静かに楽しく暮らしていたチベットの国を中国共産党解放軍が1950年に侵略したこと自体、それは強盗殺人行為であり、大罪である。
長期の治安悪化に繋がることはあたり前だ。

飛んで、2008年前後の状況はどうか。
チベット全土でデモが起きた。
その原因は確かにオリンピックと言うこともあろうが、私はその前から強化されていた「愛国再教育キャンペーン」の影響が大きいと思う。

これは全チベット人をターゲットに、老若男女、僧侶、尼僧に始まり、小、中、高、大学の学生、公務員、商人、農民、遊牧民、ただの人まで、あらゆるチベット人をグループごとに集め「ダライ批判集会」を行なうというものだった。
地方政府の仕事は「中国共産党を讃え、ダライを非難する」という書面に全員、強制的に署名させることなのだ。
文革時代と何の変わりもない。

こうして、出来上がった「チベットの民衆は全員共産党の指導の下、分裂主義者ダライのことなどとっくに忘れ、幸せに暮らしています」という報告書が北京の中央政府に上がるというわけだ。
実際、恐怖により強制しない限りチベット人が「ダライを非難する」ことなどあり得ないことは、当局も十分御承知だ。

ワラ僧院の例に見られるように、まず騒ぎをわざわざ作り出すだめに僧院に押し入るのはいつも当局の方だ。
聖域に武器を持って押し入るという行為だけでも、チベット人にとっては大いなる罪だ。
その上、僧・尼僧に対し「全員の根本のラマ」である「ギャワ・リンポチェ=ダライ・ラマ法王」を非難せよと命令する。
どれほどの苦しみを相手に与えているか、考えたことがあるのかいな?
なんて、いまさら中国の人たち、じゃなくて中国政府に人間的想像力を期待しても無駄だが、、、

ここで逆らえば、その先自分がどうなるかを知らないチベット人はいない。
中国の警察や公安に逮捕されるということがどういうことなのが、知らないチベット人はいない。
それほど、拘置所や刑務所での拷問の凄惨さについては広くチベット人の間に知れ渡っている。
今じゃ世界中に知れ渡っている。
それでも、恐怖に打ち勝ち、声を上げる人々が後を絶たない。それほどの耐え切れぬ状況が現実にあるということを、どうして中国政府は見ようとしないのか?

結局、騒ぎが起きれば起きるほどに、緊張が高まれば高まるほどに、軍隊や地方政府に対する保安予算が増額される。
チベット人が騒いでくれれば、公安、武装警察、軍隊は潤い、組織拡大が可能となる。
幹部たちには笑いが止まらないという状況であろう。

つまり、「扇動罪」により罰せられるべきはチベットの僧侶たちではなく、人の苦しみを食って太り続ける、彼らなのだ。

この構造は今や世界規模となった。
北朝鮮、ビルマ、パキスタン、スリランカ、イラン、そしてアフリカのならず者国家の裏には必ず中国がいる。

テロリストやアフリカの武装組織の少年兵に渡されるのは安価で使いやすい、中国製コピーAK-47自動小銃だ。
ちなみに、このAK-47自動小銃は世界中に1億丁も売れたという大ヒット武器商品。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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