チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年5月26日
ケグド地震・当代(現代)遊牧民定住村
写真はすべて5月25日付け、ウーセルさんのブログから。
http://woeser.middle-way.net/
写真はすべて、ケグド郊外にある「当代(現代)村」と呼ばれる遊牧民定住村の地震後の様子を伝える。
ここには主に三江源地域から強制的に移住させられてきた遊牧民たちが暮らしていた。
村はご覧の通り全壊。
「遊牧民定住プロジェクト」に関する新華社の記事によれば、
http://203.192.6.79/200911/aaa316132858_1.htm
「遊牧民定住プロジェクトにより、5年で13万4000世帯、56万名の遊牧民は安全確保型、省エネ型、環境配慮型と実用型の住宅に定住することができる。」
と中国政府は明言している。
写真に写ってる見事に崩れ去った家々がこの「安全確保型の住宅」というわけだ。
建材は日干し泥レンガか中空セメントブロックだ。
鉄筋は一切使われていない。
この村で一体何人の犠牲者が出たのか?
もちろんまだ報告はない。
彼らがそのままヤクテントに暮していれば、怪我ひとつ負わずに済んだことは確かだ。
追記:カム、アムドを中心にこれと同様の遊牧民移住村が至る所に建設されている。
これらは、ちょっとした地震でも倒壊してしまう。
彼らは伝統的遊牧生活から無理やり引き離され、無職となっただけでなく、非常に危険な住宅に住むことを強制されているのだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)