チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年5月26日
ケグド地震犠牲者へ、六七日法要
今日はケグド地震発生からちょうど6週間目に当たる。
死者をより善い来生に導くための祈願会(モンラム)は一週間ごとに行われ、次の週、49日目の祈願会「七七日(なななのか)(四十九日、満中陰、尽七日、大練忌)」を最終とする。
これは一般に仏教では49日を最長に、すべての有情は次の生を得ると信じられているからだ。
日本の浄土真宗では「故人は臨終と同時に仏(諸仏)になると考えるので、中陰期間はない」。それでも初七日とか四十九日とかには僧侶を呼ぶなり、寺に行くなりの慣習はある。
この一週間ごとのモンラムはチベットでは常に七日目の一日前に行われる。
昨日ダラムサラではこの六七日(むなのか)「檀弘忌」が行われた。
ダラムサラだけではなく、インドの各キャンプ、僧院、世界中のチベット人コミュニティー、僧院で同様のモンラムが行われた。
ダラムサラでは夕方6時半ごろ、マクロードの街からキャンドルライトビジルが始まり、数百人がツクラカンまで歩き、そこで全員が犠牲者のために長いお経を唱えた。
先の24日のブログに「23日ケグドでチベット人200人がデモ」のニュースをお伝えしましたが、ある中国人の方のご指摘でこの事件が起きたのは「23日ではなく、22日の間違い」だそうだ。
もしそうなら、お詫びしたい。
こちらは、RFAの音声のみの情報を聞いて書いたので、もしかして聞き間違えた可能性はあると思う。
訂正ついでに、5月21日のエントリーで<5/30 神戸・岡本でサカダワ・ライブとスライドショー>と、イベントの紹介をした。
その中
●料金 : 参加費200円+1ドリンク800円
と書かれていたのは、主催者側の打ち間違いで、本当は
参加費1000円+1ドリンク800円 だそうだ。
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ある中国人の方のご指摘といえば、そのドルマさんという中国の方は24日分のブログのコメントに
「★ 同じ地震被災者の漢族は、ほとんど何も援助を受けていないそうです。
チベット族は騒いでゴネ得しているのに、不公平ですね。
漢族はチベット族のようなデモをしなかったそうです。」
可哀そうに、被災地の漢民族の人たちも何の援助を得ていないそうだ。
国内、海外からの義援金が山ほど寄せられているのに、不思議ですね。
「チベット族は騒いでゴネ得しているのに、不公平ですね。」
チベット人が命がけで騒いでくれたおかげで、同じように住民票のない中国人たちも援助が貰えるようになるのではないでしょうか?
さらにドルマさんは
「★ 戸籍制度のある中国では、何事も現住所に戸籍が無ければ、無国籍の不法滞在者と変りが無いのです。」
ドルマさんは一度も被害者側の立場で物事を考えたことがないようで、常に支配者側の意見を言うのがお好きなようだ。
そういえば、今インドでは国勢調査が行われていて、私のところにも係員が来て、「登録をするといいことがあるから是非登録するように」とすすめに来た。
このインド市民としての登録はすべての現在インドに暮らす人々を対象に行われる。チベット難民も登録することができる。
デリーの路上に暮らす他の州からの都市移民も登録される。
登録後には写真付き証明書が貰え、これがあればインド市民としてその憲法上保障されるすべての権利を主張できる。
もちろん、今までにも同様なものはあったのだ。
それに比べ、中国では普通の市民が住民票を言えることは容易ではない。
場合によっては、ワイロが必要となる。
だから都市移民や黒子など大量の、人として認められていない中国人が発生している。
ドルマさん曰く彼らは「無国籍の不法滞在者と変りが無い」と見なされる。
ドルマさんの言い方から察するに、中国政府はこれを問題とは思っておらず、当たり前と考えているようなのだ。
同じく、周辺の被災地の人たちに援助が行かないのも、当然と思っていらっしゃるようだが、他の世界じゃこれは普通じゃない。
その上、それら政府が無視する人たちを助けようとする行為さえも禁止するとは、、、? 周辺の村人や不法(にされた)人々は早く死ね!といってるようなものだ。
例えばこれは、神戸市の住民票を持っていない人や、神戸周辺の明石とか宝塚の住民を政府は一切援助しないし、援助してもいけないという通達が出されたというに等しいのだ。
これを「当たり前だ」とする人たちが中国にはいると言うことだ。
昨日のRFAによれば、今も、カム方面の複数の僧院から送り出されたトラック援助隊が次々追い返されているという。
また、中国政府は地震発生後早い時期に「海外に住む玉樹出身者の被災地慰問を歓迎する」と発表したにも関わらず、インドやアメリカの中国大使館にビザ申請を行ったケグド出身者はこれまでのところ、誰もまだビザを取得できていないという。
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明日はサカダワの中日、満月、15日目。
この日だけは外の道の上で五体投地をするという、TCVの生徒も大勢いる。
明日のコルラはそのような俄か行者で溢れることであろう。
それと乞食。
街からツクラカンへの道上やツクラカンの周りにはインド人の乞食が溢れる。
この日には多くのチベット人から特別ボーナスを貰えると知っているからだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)