チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年4月29日

弾圧されたチベット知識人リスト/「開き直り大国」の恐ろしさ

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l-r, Wang Lixiong, Jamyang Kyi, Woeser, Lhamo Kyab写真中央の二人の女性が、現在もっとも活動的なチベット人知識人。
左手:ジャミヤン・キ。
右手:ウーセル

チベットでは最近、作家、歌手などが次々に逮捕されている。
これは、中国も批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約・B規約)第19条」に規定されている、言論と表現の自由を明らかに侵害するものだ

チベット人、タシ・ツェリン氏が最近、拘留、逮捕、懲役刑を受けたチベット人知識人17人をリストアップしてくれた。
(もちろんこれで全てではない、一部だ)

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タシ・ツェリン

我々の社会が、アイデンティティー、歴史、文化、そしてより広い政治力学などの問題を批判的に考察することのできる独立した知識人・思索者を生むことは稀である。中国に侵略された後、その「教育」の下で、例えば1979~89年にかけて作家活動を行なったパルデン・ギャルとドゥンドゥップ・ギャルのような「チベット人作家・知識人の第一世代」が生まれるまでに、数十年を要した。
1989~2000年にかけその著作が発表され高い人気を得た、ショクドゥンとその仲間たちは、現在の第三世代の者たちから「第二世代の作家・知識人」と呼ばれる。
彼らはみんな、チベットの高校生や大学生の間で人気が高い。
チベットの将来について関心のある我々にとって、この世俗の知的遺産が継承されるという価値は軽視できないものだ。

作家:
チャド・リンチェン・サンポ/この作家は2009年夏、突然「行方不明」となった。彼は2008年「我が祖国と平和解放」及び「我が祖国と警聴」と題された本を出版している。
詳しくは(チ):http://www.khabdha.org/?p=3232

ツェリン・ドゥンドゥップ/「風びゅーびゅー」と題された本を自費出版した数カ月後、マロ資料館の公職を解かれる。
詳しくは(チ):http://www.khabdha.org/?p=4619#more-4619

ドルマ・キャップ/「平安なきヒマラヤ」の作者。この本は2005年、出版される前に差し押さえられ、本人は10年の刑を受けた。ICTがこの漢文草稿を入手し、チベット語に翻訳され、チベットPENにより公表された。
詳しくは:http://www.tibettimes.net/news.php?cat=14&&id=1849

ウーセル/隠されたチベットを追う作家、ブロガー。
ここ数年、彼女の自由は継続的に阻害されている。それでも彼女は書き続けている。
http://woeser.middle-way.net/

タシタシ・ラプテン(ペンネーム=トゥラン)/蘭州、北西民族学院生徒。
「血書」と題された本を出版した後2010年4月ドゥクロ(下段参照)とともに拘留・逮捕された。
本については(チ):http://www.khabdha.org/?p=3484)
逮捕については:(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2010-04.html?p=2#20100407

(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51258282.html

http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=27066トゥランは2009年8月にも拘留されている。
http://www.shambalapost.com/international-news/988-2009-08-07-06-32-27

ドゥクロ(ペンネーム=ショクジャン)/蘭州、北西民族学院生徒。
2010年4月タシ・ラプテンとともに拘留・逮捕される。
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=27066

クンガ・ツェヤン(ペンネーム=ガンニ)/ラプラン僧院僧侶。作家、写真家、環境活動家。
2009年3月、逮捕される。
http://www.highpeakspureearth.com/2009/04/remembering-honourable-gangnyi-la.html
http://www.internationalpen.org.uk/index.cfm?objectid=264A6A72-3048-676E-26881BFF062C1C43

目を覚ませゴ・シェラップ・ギャツォ/2007年に出版された「目を覚ませ」の作者。
2008年逮捕、収監され、翌年の2009年1月、釈放される。
http://www.highpeakspureearth.com/2009/01/to-go-sherab-gyatso-la-by-jamyang-kyi.html

クンチョック・ツェペル・ゴペ・ツァンクンチョック・ツェペル・ゴペ・ツァン/ネットライター、チベット語ウエブサイト「灯明」http://www.tibetcm.com .を創始し、そのエディターでもあった。
彼は2009年2月に逮捕され、同年11月、15年の刑を言い渡される。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51296302.html

http://www.internationalpen.org.uk/index.cfm?objectid=264A6A72-3048-676E-26881BFF062C1C43

http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=25985

タゲル(ペンネーム=ショクドゥン)/「天地門」の作者。2010年4月23日逮捕。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2010-04.html#20100426
http://www.highpeakspureearth.com/2010/04/earthquake-in-tibet-leading-tibetan.html

音楽家
ジャミヤン・キ/作家、歌手。
2008年4月拘留。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/50974817.html

http://www.highpeakspureearth.com/2008/11/they-by-jamyang-kyi.html

ジャミヤン・キは解放された後、拘留、尋問中の経験をブログに発表した。
これは後、英語に翻訳され「Like gold that fears no fire」と題され出版された。
http://www.savetibet.org/media-center/ict-news-reports/gold-fears-no-fire-new-writing-tibet

タシ・ドゥンドゥップ/歌手。
2010年1月5日、15か月間の強制労働再教育の刑を受ける。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51384333.html

http://www.highpeakspureearth.com/2010/03/torture-without-trace-five-songs-by.html

映像作家
ドゥンドゥップ・ワンチェン/ドキュメンタリー・フィルム「ジクデル(恐怖を乗り越えて)」を制作したとして2008年3月に逮捕される。刑期6年を受け服役中。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51347986.html

(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2009-10.html

http://www.leavingfearbehind.com/node/17

ジグメ・ギャツォ/ドゥンドゥップ・ワンチェンのアシスタントとして「ジクデル」の制作に関わったとして、2009年逮捕。後解放。
http://www.ifex.org/china/tibet/2009/03/19/security_officials_re_arrest_tibetan/

教育関係者
チュキョン・ツェテン/マチュ中学校補助教員。
2010年3月、生徒たちが抗議デモを行なった後、懲戒免職。
彼はその後、公安職員に連れさられ、今も行方不明。
(日)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51431151.html

http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=27072

キャプチェン・デドル/マチュ中学校校長。
2010年3月、生徒たちがデモを行なった後、懲戒免職。

ド・レ/マチュ中学校補助教員。
同上。

タシ・ツェリン氏はさらに「中国当局にとっては、これらの一握りの記するに値するチベット人を探し出し、逮捕し、黙らせることは簡単なことであろうが、チベット人社会にとっては、これがどれほどの打撃となるかを想像するば、事は重大であることが解る」と言ってる。

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石平さんの以下の記事を読み、最近このブログを賑わせてくれてる人たちのことが頭を過った。ので、全文張り付けさせて頂く。

【石平のChina Watch】「開き直り大国」の恐ろしさ
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100429/chn1004290754001-n3.htm

2010.4.29 07:52

上海万博PRソングの盗作疑惑の一件は、盗作されたとされる岡本真夜さんが楽曲の使用を許諾したことで一段落と思われたが、渦中の中国人作曲家の所属する音楽会社が公式声明を発表し、盗作であることを強く否定した上で、疑惑を指摘してきた人々を「下心のある人間」だと罵倒(ばとう)したのである。

 2つの楽曲が非常に類似していることは科学的方法によっても検証済みだし、上海万博事務局はPRソングの著作権にトラブルが発生していることを認めている。同事務局が岡本さんの所属事務所に楽曲の使用許諾を申請したこと自体、問題の楽曲が盗作であることの何よりの証明であろう。

 つまり、誰の目から見てもそれが盗作であることは明らかだし、盗作という行為は当事者にとっても恥じるべきことであろう。にもかかわらず、当の疑惑者は露ほどの恥の意識も見せることなく、岡本さんの寛大さに感謝することもなく、むしろ「盗人たけだけしい」というべき態度で、「盗作でない」と堂々と開き直ったのである。

 その並ならぬ「神経の太さ」は大半の日本人の度肝を抜くものであろうが、実は今の中国では、悪事を働いた人が「悪」を悪とも思わず、「恥」を恥とも感じず、むしろ開き直って自らを正当化するのが「国民的流儀」となっている。

たとえば、今年の3月に「夫婦交換パーティー」を開いたことで起訴された南京市在住の大学助教授は「おれのやったことは不倫よりも高尚な行為だ」と自賛し、上海市内の13階マンションが倒壊した一件で被告となった責任者は「落雷が原因かも」と強弁した。

 汚職で捕まった政府の高官たちは「私より多く収賄したやつはいくらでもいるのに、私だけが捕まったのはどういうことだ」「私は二十数年間苦労してやっと市長のいすを手に入れた。多少収賄して何が悪いか」…。これらの“名セリフ”は中国ネット上の語り草ともなっている。

 それは別に個人に限られたことではない。中国の政府も同類だ。中国海軍のヘリコプターが沖縄本島南方海域で海上自衛隊の護衛艦と2度にわたって異常接近した問題で、中国外務省は「日本側の監視活動に対する必要な防衛措置だ」と開き直って正当化し、中国国営の国際放送局に至っては、中国海軍による接近行為を「紳士的風格を示した」とまで褒めたたえた。そういえば、「毒ギョーザ」事件では、一時「問題は日本側にあるのではないか」と開き直ったのも当の中国政府である。

とにかく、民間人から政府まで、今の中国では、「自分たちはちっとも悪くない。すべては相手が悪いのだ」といった「開き直りの精神」がいたるところで貫徹されている様子である。

 考えてみれば、昔の中国人はそれほど恥知らずの人間たちでもなかった。友人や親族を密告することや教師を殴り殺すことが「革命的英雄行為」だと褒めたたえられた毛沢東の時代から、中国人は徐々に善悪の分別を失っていった。

 さらに、トウ小平の時代、政府が天安門で行った自らの虐殺行為を「正しい措置」だと正当化して開き直って以来、自分の過ちを絶対認めないことが、この国と国民のスタイルとして定着してきた。

 このような国民と政府に対して、日本人はよほど慎重に対処していくべきだし、あまり深く付き合わない方がよいのではないかと思う。ましてや、中国を相手とする「東アジア共同体構想」うんぬんというのは幼稚極まりない妄想以外の何ものでもなかろう。

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追記:今日の青海テレビでは「近代的病院の中で、真っ赤なハート形の枕の上に長髪チベットみつあみ男(カンパ・地震被災者のつもり)が7.8人の白衣の天使たちに囲まれ、至れり尽くせりの介護を受けているというシーン」が繰り返し流されている。

何考えてんだか、CMも、もっと考えないとね。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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