チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年3月23日
Google 中国より撤退
他の企業と違い、Googleが中国の情報規制・監視にあくまでNoといったことは称賛に値する。
中国の中でももっともネットの検閲が厳しいのはチベットと新疆ウイグルだ。
チベット支援の世界的ネットワークであるITSNは、Google社が、中国政府に妥協せず、ホンコンをベースに従来の中国語検索サイトを継続すると決定したことに対し感謝の意を表明する手紙を送った。
その中、チベットではネットを使って外の世界に真実を伝えることがいかに危険な行為であるかを示す例として以下の3つのケースを報告している。
(若松訳)
1)Norzin Wangmo(チベット人共産党幹部)は2008年11月3日にチベットの状況を電話とインターネットを使って伝えたために5年の刑を受けました。
チベット人である彼の友人からは‘Walza’ (勇者)と呼ばれる彼は2008年4月に拘束され拷問を受けました。
2)Gonpo Tserangは外国の著名人のトレッキングや遠征、重要な山岳捜査に参加する経験豊かなガイドです。
2008年3月14日ラサで起きた抗議行動について携帯メールを送ったため2008年10月に ”国家分裂主義を煽動”した罪で3年の刑を受けました。
The Dui Hua Foundationが入手した起訴状と判決にはこうありました。
「被告人Gonpo Tseringはインターネットと携帯電話を使用して”3月14日事件”に関するチベット地区での社会的安定の状況に関して事実無根な誇張したメールを送信した」と。
3)Kunchok Tsephel、中国環境省で働く、影響力のあるチベット語サイトChodmeの創始者 (‘Butter-Lamp,’ www.tibetcm.com)は2009年11月に15年の刑を受けました。
罪状は彼のウェブサイトの内容に関するものと信じられています。
サイトは主にチベットの文化を守ることを目的としており、チベットで起きた2008年の抗議行動についての情報も含みます。
中国政府は情報共有などを犯罪とすることを強化しておりチベットの状況について外界と電話、メールを使って交信することはすなわち「国家転覆罪」とみなされます。
2008年12月のTibet Daily では北京政府が“偽作と煽動”を取り締まるための部隊を公安当局内に設置したことが報道されました。
ITSNメンバー団体であるInternational Campaign for Tibetによると,この新たな部署の出現によって多くの拘束者が出、抗議行動に参加した罪よりも、インターネットで重要な情報や意見を受け取ったり,または送ったりすることは、はるかに重い刑を受けることになります。
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電話やネットが常に監視されている国に住んでいると想像してみるといい。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)