チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年2月5日
法王がハイチの被害者に寄付
今回の対談の後、ダライ・ラマ法王はまだ如何なるコメントも発表されていない。
ただ、今回の特使の一人であるケルサン・ギェルツェン氏が法王に報告に行ったときの様子が少しだけ
Asia Times Online
http://www.atimes.com/atimes/China/LB05Ad01.html
に載っている。
記者がケルサン・ギェルツェン氏に以下の質問をした。
「第9回対談の結果を、ダライ・ラマ法王や亡命政府はどのように受け取ったのか?」
これに対しケルサンは、
「私たちの報告を法王は非常に注意深く、興味津々に聴かれていた。要点を明確にするための質問もされた。法王は我々が再び中国側の担当者と直接会うことができ、自分たちの立場を提示し、見識を明らかにすることができたということは良いことだ、と感じられていた」と答え、
さらに「第9回対話に何らかの成果はもちろん期待されていたであろう。しかし、今状況が厳しいことは解っていた。中国側の態度は強硬だ。今は、チベット問題だけに限らず世界中の国々が中国政府の示す傲慢な権力誇示に不満を抱いている。このような状況下でチベットの指導部が話合いに大きく突破口が開けたり、新たな展開が起こることを期待していたわけではない。
だから、帰ってきて我々が対話の内容を報告したとき、誰も驚く者はいなかったのだ」とコメントしている。
今回、中国側はダライ・ラマ法王に「国益を侵さない、憲法の準則を踏みにじらない、民族の尊厳を傷つけない、各民族人民の共通の願いに背かない」という「四つの要求」を突き付けたが、これってまったく逆に中国政府に対しチベット側が要求している話としか思えない。
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法王はこのたびハイチ地震の被害者のために10万スイスフラン(約860万円)を国際赤十字を通じ寄付された。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=26545&article=Red+Cross+welcomes+Dalai+Lama’s+contribution+for+Haiti+relief
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偽パンチェン・ラマ11世の話。
中国:ノルブ氏が公職に パンチェン・ラマ11世認定 – 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20100204k0000m030042000c.html
【北京・浦松丈二】中国政府が95年にチベット仏教第2の活仏、パンチェン・ラマ11世に認定したギャインツァイン・ノルブ氏(19)が3日開幕した中国仏教協会の全国代表会議で同協会副会長に選出された。
ノルブ氏が公職に就くのは初めて。歴代パンチェン・ラマはチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの死後に重要な役割を果たしており、中国当局はダライ・ラマ14世の死後を視野にノルブ氏を公職に就かせたとみられる。
一方、ダライ・ラマ14世(インドに亡命中)は95年、パンチェン・ラマ11世として別にゲドン・チョエキ・ニマ氏を認定したが、中国当局は拒否し、ニマ氏は行方不明になったままだ。
毎日新聞 2010年2月3日 19時13分
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この記事にはちゃんと世界最年少の政治囚ニマ少年(ゲンドゥン・チュキ・ニマ)のことに触れられているが、新聞によれば残念ながら、まったくニマ少年のことに言及していない記事も多い。
彼は、中国仏教協会、チベット仏教を代表し、中国語とチベット語で「愛国と法律遵守、愛教と戒律遵守を基礎とし、各流派間の仏教学の交流を拡大し、社会慈善事業に積極的に参加し、調和が取れた社会を構築するため仏教界の役割を果たさなければらない。私は皆様の信頼に決して背かず、祖国の統一、民族の団結、仏法の発揚と世界の平和のために自分のすべてを貢献する」と述べたそうだ。
彼が何時か発狂しないように祈る。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)