チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年1月22日
天安門事件リーダー、周勇軍に別件で懲役9年
周勇軍氏の写真を持っているのは氏のパートナー C/R REUTERS
産経新聞 2010.1.21
天安門事件リーダー、詐欺未遂で懲役9年 中国で「別件逮捕」急増
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100121/chn1001212049007-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100121/chn1001212049007-n2.htm
【北京=矢板明夫】中国の民主化活動家、1989年6月の天安門事件で学生リーダーを務めた周勇軍氏(42)が、詐欺未遂の罪に問われた裁判で、四川省射洪県人民法院(地裁)は今月中旬、懲役9年の実刑判決を下した。香港などにある複数の民主化支援団体が21日までに明らかにした。最近、中国当局は国際社会の批判をかわすため、反体制活動家を政治犯ではなく、詐欺や窃盗などの刑事犯として逮捕するケースが増えている。
中国当局が認定した詐欺未遂事件とは、2008年夏、周氏が香港の銀行で偽名を使い、中国政府に非合法団体と指定された気功団体の預金口座から、現金200万香港ドル(約2300万円)を引き出そうとしたが、口座はすでに中国当局に凍結されており、未遂に終わったというもの。周氏は「口座の金は民主化活動の資金であり、偽名を使ったが詐欺ではない」と無罪を主張したが、認められなかった。
周氏は1989年の民主化活動で、大学生の自治組織、北京市大学生自治連合会の会長として活躍。天安門事件の直後に逮捕され、2度投獄された。93年から米国に移住した以後も中国の民主化運動にかかわり、08年9月、香港から中国入りした際に拘束された。判決を受け、周氏は直ちに控訴したという。
一方、湖南省の地裁では今月中旬、窃盗罪に問われた人権活動家、謝福林氏に対する裁判も開かれた。謝氏は中国共産党の一党独裁体制の終結を求めて発表した声明「08憲章」に署名した一人で、昨年7月に身柄拘束された。逮捕容疑は電力会社に無断で電線を引き、電気を盗んだという内容で、最高懲役10年の判決を受ける可能性もあるという。謝氏は「電力会社の了解を事前に得ている」と主張している。
中国はこれまで反体制活動家の身柄拘束では「国家転覆罪」などを適用してきたが、そのたびに国際社会から批判を受け、欧米諸国と外交問題に発展することもあった。中国当局はこのため、活動家たちを別件の刑事事件や微罪で逮捕することで政治性を排し、外国からの批判をかわそうとしているのだ。
香港を拠点とする人権団体の関係者は、「統計上の政治犯の数は減ったかもしれないが、善良な人がぬれぎぬを着せられており、中国の人権状況はますます悪化している」と批判を強めている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)