チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年10月27日

法王は今日ノルブリンカで処刑された4人のために<ツェメーユンテン・真理の祈り>を唱えられた。

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26.10.09 Norblingka法王は今日10月26日、ノルブリンカ・インスティテュートを訪問されました。

ダラムサラのノルブリンカの本堂は日本は金沢の馬場様ご家族の寄付により建てられたものです。
私もかつて、この本堂その他ノルブリンカの設計・監督のために8年間も働きました。
だから、ヒマラヤ晴れの良き日に法王がノルブリンカにお出でになられて私も特別にうれしい半日でした。

26.10.09 Norblingka2法王は午後3時までおられるようでしたが、私は先に帰ったので午後に何があったかは知りません。

26.10.09 Norblingka /Kham Tulk Rinpocheこの方はカム・トゥル・リンポチェ。ニンマ派の大長老です。
このリンポチェがかつて宗教大臣だった1986年にこの仕事を頼まれたのです。
その人柄と優しそうな笑顔でぽっくるやられたわけです。
もっともそのあとの実際の仕事はその時次官、その後宗教大臣になったケルサン・イシェ氏とその奥さんキム・イシェの下に進められました。
キム・イシェはフランス系アメリカ人の女性です。
8年、計画段階からいえば10年もかかっていろいろあったが、、、、

5,6年前からなぜか管理が亡命政府の下から新しくこのご夫婦の作ったNGOにただ同然で払い下げられた。
もちろん寄付を集めるのに二人の貢献は大きかったであろう。
その後の管理もキム女史が一手に引き受けていた。
それにしても私を含め多くの者はこれに納得しなかった、、、
二人のために寄付したり、ボランティアした訳じゃないからね、、、
ということもあった。

何はともあれ、法王は今日もお元気にみんなにサービスです。

26.10.09 Norblingka3恒例の狩人たちの歓迎の舞いの前を通過され、

26.10.09 Norblingka5本堂の玉座につかれました。
今日の布陣は後ろにブッダ・シャカムニ、向かって左手にギャワ・カルマパ、右手に現ボン教座主、正面に現ガンデン・ティパのリクスン・リンポチェというマンダラでした。
今日の法王以外のメイン・ゲストはいつもは南インドにおられるゲルク派のトップ、ガンデン・ティパでしたが、終始衝立の後ろでまるでお姿は見ることができませんでした。

26.10.09 Norblingka12挨拶を行う、首相のサンドゥン・リンポチェ。
「ノルブリンカ・インスティチュートはチベットの文化保存に大いに貢献している。
経済的にも成功し多くのチベット人を雇用している。」と褒めておられました。

26.10.09 Norblingka6ジェ・ツォンカパも被られていたという「ペンシャ」を頭に載せられる。

26.10.09 Norblingka13ゲルク派の象徴、黄色いとんがり帽子の名は「シャセル」

26.10.09 Norblingka9法王は法要の後、短いスピーチをされました。
まず、「今日は私の新しい<伝記>の出版を記念して呼ばれたようだが、この話は随分前からあったと思うが、やっとできたのだな」と仕事が遅いとチクリ。

次に、正面に座られている新しいガンデン・ティパのリクスン・リンポチェの話をされた。
「ゲルク派の座主ガンデン・ティパは純粋に学識と人柄によって選ばれる。
これは素晴らしいことではないか。
家柄も出身地も問わない、誰だって努力すればなれるのだ。
このリンポチェはラダックの出身だが、政治の世界に全く関わらず(師はラダックの国会議員故パクラ・リンポチェの兄弟で後を継ぐよう要請されていたことがある)勉強一途にして来られた、立派なラマだ」と。

その後、「先週4人のチベット人がラサで処刑された。悲しいことだ。
4人を含め、その他多くの犠牲者のためにここでみんなで<ツェメーユンテン*>を唱えよう(歌おう)ではないか。
特にその中、
26.10.09 Norblingka10仏法とそれを守るサンガ、国と国民のために  
大切な己の命や財を投げ出し  
千万の苦を耐えつづけし人々よ  
ポタラの王の慈悲に見守られますように

という箇所で彼らのことを思うように」と話されました。

写真は<ツェメーユンテン・真実の祈り>を唱えられる法王。

26.10.09 Norblingka7*<ツェメーユンテン・真実の祈り>は法王ご自身が亡命されてしばらくして、チベットに残した者たちのことを思い綴られた詩句です。
メロディーが付けられ歌となり、今では第二の国歌のようにチベット人の集会では常に最後に歌われます。

以下、私の大昔の稚訳で全文を掲載します。

<真実の祈り> 

 三宝に帰依いたします。

無量の徳の大海と伴にあられ  
身寄りなき有情を一人子の如くおぼしめす  
三世の諸仏、菩薩、成就者たちよ  
どうか わたくしのこの真実の嘆願に耳傾けたまえ    

聖俗二辺の懊悩を払い、最勝の仏の教えは  
全地球の利と幸の吉祥を増長せしめる  
どうか、法に巧みなる、賢者、成就者たちよ  
十行の増大を示したまえ  

清め切らぬ、かつての悪業の果  
その環境の不断の苦に喘ぐ薄幸なる有情たち  
どうか、耐え難き病、戦争、飢餓等すべての恐れ寂滅し  
喜びの大海の内に、安堵の息をつけますよう    

特にここに雪の国チベット、仏法と伴なる国に生れし有情たち  
悪徳、蛮行、非情なる共産の大群に  
喘ぎ打ちのめされし血と涙の流れ  
速やかに断たれんがため、愛の力の大群が生れますように    

煩悩の魔に惑わされ、その悪行により  
自他伴に破滅に向かうものたちは哀れむべし  
残虐なる者達に、善悪の目を得させるための慈愛、友愛が生れ  
吉祥のうちに、すべてが結ばれますように    

久しくも心底の悲願、チベットの完全なる自由  
吉祥の果たされますよう  
聖俗の自然に溶け合う宴と呼ばれる国を 再び享受する幸運が  
一日も早く訪れますように    

仏法とそれを守るサンガ、国と国民のために  
大切な己の命や財を投げ出し  
千万の苦を耐えつづけし人々よ  
ポタラの王の慈悲に見守られますように  

そう、守護尊観音菩薩の威力により  
仏、菩薩たち照覧のうちに  
雪山の国にて祈りの大海をなせし善果が  
今ここに速やかに現前いたしますよう  

現空、法性、深遠なる縁起と三宝の悲の力と  
この真実の言葉の力、過たぬ縁起の真理の力により  
わたくしたちの真実の祈りが妨げなく  
一日も早く実現されますよう  

26.10.09 Norblingka111イギリスの中国大使館は「処刑されたのはロプサン・ギェルツェンとロヤッのみで他の二人はまだ処刑されてはいない、4人処刑されたというのはただの嘘の噂だ」と言ってるようです。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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