チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年9月29日

ウーセル女史著「殺劫」10月中旬発刊予定

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殺劫

いよいよ、待ちに待ったウーセルさんの「チベットの文革」を暴いた著書の日本語訳が10月中旬出版予定だそうです。
6月には出るという話だったのですが、じっと10月の「国慶節」が過ぎるタイミングを見計らっていたのでしょうか!?
とにかく貴重な本です。この本の影響力はどれほどになるか、、、測りがたい。
ちょっと高いですがね。

細かいことですが、一つ気になるのは「ウーセル」さんを「オーセル」さんと表記してあることです。
カムのあたりでは「あ・なろう・お・た=ウー、さ・でんぼー・せ・ら=セル」を「オーセル」と発音するのでしょうか?
もっとも厳密に言えば、最初からチベット語の発音をカタカナだけで表記するには限界があるわけですが、これはそれ以前の問題か。今後「オーセル」さんが日本で定着しそうで気になります。
ちなみに「ウーセル」の意味は「光明」です。

「殺劫(シャーチェ)」のチベット語も思い浮かばない?「シャー」じゃなくて「セー」ならまだわかるが?というか、これはきっと中国読みでしょう?
又はチベット語の「サル・ジェ=革命」のカム方言か?
誰か教えてください。

ところで、表紙に使われているモダンアートのようなオブジェの写真は、文革時代に刑場で銃殺刑を受けるチベット人の後姿と思われます。
背中に書かれた読みにくいチベット語を無理に読んで仮訳すれば、「正真正銘の悪党カシュ(家か村の名?或いは役職名)チュゲル・ニマの息の根を完全に止めてやる」です。

以下集広舎の案内より・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 殺 劫(シャーチェ) チベットの文化大革命
   ツェリン・オーセル著   ツェリン・ドルジェ写真
   藤野彰/劉燕子訳 A5判並製 412頁 定価 四八三〇円

        10月中旬出版予定

 チベット「封印された記憶」の真実――。
1966年から10年間、チベット高原を吹き荒れた文化大革命の嵐は、仏教王
国チベットの伝統文化と信仰生活を完膚なきまでに叩き壊した。現在も続くチベ
ット民族の抵抗は、この史上まれな暴挙が刻印した悲痛な記憶と底流でつながっ
ている。長らく秘められていた「赤いチベット」の真実が、いま本書によって4
0余年ぶりに甦る。

本書は、チベットにおけるプロレタリア文化大革命(一九六六~七六年)の写真
・証言集である。原著は、北京在住のチベット人女性作家、ツェリン・オーセル
(次仁唯色)氏が、父親のツェリン・ドルジェ(澤仁多吉)氏の撮影した写真を
基に執筆・編集したもので、本文は写真解説や関係者へのインタビューで構成さ
れている。
原著の題名「殺劫(シャーチエ)」の「劫」については、「奪う」、「脅す」、
「長い時間」などの意味があり、梵語では「劫波(劫簸)=kalpa」の略とされ、
仏教語では「万劫不復(永遠に回復できない)」や「劫数 (厄運、避けられない
運命)」という熟語がある。また、中国語には「劫灰(チエホイ)」という言葉が
あり、大きな災難の名残を指す。例えば、唐詩の中に「劫灰飛尽古今平(飛び尽
くして平らかなり)」(李賀「秦王飲酒」)という詩句があるが、全世界を焼き尽
くした劫火の後に灰が飛び散り、何事もないかのように平和な日々が続いている
といった意味である。(訳者記)

文革研究の空白を埋める――。

文革は共産党の一つの不都合な出来事であり、チベットはもう一つの不都合な問
題である。したがって、チベット文革は二重のタブーとなり、なおさら触れては
ならないものになっている。……オーセルの父親が撮影したチベット文革の写真
は極めて特別な意義を持っていると言える。……オーセルがこれらの写真をめぐ
って取り組んだ長期間の調査と執筆がようやく完了した。……これにより、文革
研究におけるチベットの部分も、もはや空白ではなくなった。
(王力雄「序」より)

オーセルさんの不屈の姿勢に対する共感――。

周知のように、中国における言論統制は相変わらず厳しい。しかし、困難な政治
環境にもめげず、ペンの力を信じて中国社会の様々な矛盾や不正と戦っている多くの知識人がいることを、私は長年の現地取材体験を通じてよく知っている。オーセルさんは疑いなく、そうした勇気と良識を備えた知識人の一人である。ジャーナリストもペンの力だけが頼りだ。オーセルさんの不屈の姿勢に対する共感こそが、何にも増して『殺劫』翻訳の推進力となったことを最後に記しておきたい。 
(訳者あとがきより)

目 次

序――ツェリン・オーセル
序――王力雄
写真について――ツェリン・オーセル
日本の読者へ――日本語版序

第一章 「古いチベット」を破壊せよ――文化大革命の衝撃

1 やがて革命が押し寄せてくる

2 ジョカン寺の破壊
「四旧」のシンボル/ラサ紅衛兵の第一次行動/ジョカン寺はいかに壊されたか/中国内地からチベット入りした紅衛兵/ジョカン寺はどれだけ破壊されたか/破壊後のジョカン寺

3 「牛鬼蛇神」のつるし上げ
    「遊闘」の隊列が進む/糾弾される転生僧/人倫の崩壊/チベットの「牛鬼蛇神」/様々な積極分子/恐るべき居民委員会

4 改名の嵐
    「封建的」とされたチベット名/パルコルは「立新大街」に/「人民公園」になったノルブ・リンカ/チャクポ・リ変じて「勝利峰」

第二章 造反者の内戦――「仲の良し悪しは派閥で決まる」

 二大造反派
    「造総」か「大連指」か/両派は実のところ似た者同士/血と炎の対決/事件の結末

第三章 「雪の国」の龍――解放軍とチベット

1 軍事管制
    社会秩序の回復/チベットにおける解放軍/軍隊内部の闘争/威風堂々たる「軍宣隊」

2 国民皆兵

第四章 毛沢東の新チベット――「革命」すなわち「殺劫」

1 革命委員会
2 人民公社
3 新たな神の創出

第五章 エピローグ――二〇年の輪廻
神界の輪廻

参考文献

解説  チベットの文化大革命――現在を照射する歴史の闇 

藤野彰、訳者あとがき

 
著者・訳者紹介
ツェリン・オーセル(次仁唯色 Tsering Woeser)
1966年、文化大革命下のラサに生まれる。原籍はチベット東部カムのデルゲ(徳
格)。1988年、四川省成都の西南民族学院(現・西南民族大学)漢語文(中国語・
中国文学)系を卒業し、ラサで雑誌『西蔵文学』の編集に携わる。主な作品に詩集
『西蔵在上』(青海人民出版社、1999年)、散文集『名為西蔵的詩』(2003年に
『西蔵筆記』の書名で花城出版社から出版後、発禁処分となり、2006年に台北の
大塊文化出版股処ヘ有限公司から再発行)、旅行記『西蔵:絳紅色的地図』(台亂僉・・兔佝納辧・003年)など。2006年、大塊文化出版股処ヘ有限公司から、本書↑愡・紂戮函▲船戰奪畔験彗慮骸圓離ぅ鵐織咼紂悉検慇沼・⑱院戮鮟佝如・崛郎遒
箸詫稽鬚任△蝓・・・任△蝓⊂攷佑任△襦廚鬟皀奪函爾箸垢襦が

藤野 彰(ふじの・あきら)
1955年、東京生まれ。78年、早稲田大学政治経済学部卒。同年、読売新聞社入社
。86~87年、中国政府奨学金留学生として山東大学留学。上海特派員、北京特派
員、シンガポール支局長、国際部次長などを経て中国総局長(在北京)を2度務
める。中国駐在は通算11年。2006年から東京本社編集委員(中国問題担当)。主
な著書に『嘆きの中国報道――改革・開放を問う』(亜紀書房)、『現代中国の
苦悩』(日中出版)、『臨界点の中国――コラムで読む胡錦濤時代』(集広舎)
、『現代中国を知るための50章【第3版】』(明石書店、共編著)、『上海・長
江経済圏Q&A100』(亜紀書房、共編著)、『中国環境報告――苦悩する大
地は甦るか 増補改訂版』(日中出版、編著)など。訳書に『わが父・障ナ小平↑嵎験廖弸亰遏幣絏次法戞蔽羆皛・誠啓辧・μ・法◆惻謠梓陝宗獣羚颪鯤僂┐訝法
戞米錝羹佝如法が

劉燕子(リュウ・イェンズ)
作家、現代中国文学者。中国北京生まれ。湖南省長沙で育つ。1991年、留学生と
して来日し、大阪市立大学大学院(教育学専攻)、関西大学大学院(文学専攻)
を経て、現在、関西の複数の大学で非常勤講師。邦訳書に『黄翔の詩と詩想』(
思潮社)、『温故一九四二』(中国書店)、『中国低層訪談録――インタビュー
どん底の世界』(集広舎)、『ケータイ』(桜美林大学北東アジア綜合研究所)、中
国語共訳書に『家永三郎自伝』(香港商務印書館)などがあり、中国語著書に『
這条河、流過誰的前生與後世?』など多数。

集広舍発行 中国書店発売
〒812-0035 福岡市博多区中呉服町5-23
092(271)3767 FAX092(272)2946 
http:shukousha.com

             プレスリリース
シャ-チェ 
 殺 劫    チベットの文化大革命
 ツェリン・オーセル著   ツェリン・ドルジェ写真
  藤野彰/劉燕子訳 A5判並製 412頁 定価 四八三〇円

   1976年に幕を閉じた騒乱十年の中国文化大革命については、様々な調査研
究と報告が乱れ咲いているが、チベットで行なわれた文革の大衆運動の実態は、
これまでほとんど報じられていない。そこには漢民族とチベット族、さらには各
民族間の歴史的な相克、およびチベット仏教を柱とする深刻な宗教問題などが複
雑にからみ合い、チベットの文革騒乱の実情報告は、現地で深く関与した人民解
放軍や、中国共産党中央のタブーとして、日の目を見ないでいるのであろう。
 ところが、その空白の一部を埋める驚異的な資料が、著述家であるチベット人
の女性の手元から明るみに持ち出された。それは文革当時、チベット駐屯の解放
軍の中級士官だった彼女の父ツェリン・ドルジェが、趣味のカメラを駆使して大
衆運動の現場をつぶさに撮影した、数百枚におよぶネガフィルムであった。
 事件や事象を説明するのに写真ほど雄弁な手段はない。
 1999年の春、文筆家の彼女ツェリン・オーセルは、八年前に亡くなった父が撮
り溜めた写真を公開し、チベット文革の真実を世に知らせるべきではないかと考
え、生存している画面上の主要人物や、当時の紅衛兵、行政幹部、とくに大衆か
ら手荒くつるし上げられている「反革命」人物本人など七十人以上の生存してい
る関係者を、六年にわたり探し回った。そして、直接彼らの詳細な証言や、四十
数年前の思い出話を聞き出し、かつ克明に記録し、談話を録音したのである。こ
れは、現在でも中国においては、ある種の危険を伴う行為である。2003年に彼女
が出版した散文集『西蔵筆記』は、その筋から発禁処分を受け、彼女自身は公職
を解かれたという。
 苦心して集め得たデータをもとに、彼女がまとめた二冊の本『殺劫』と『西蔵
筆記』は、中国では発表出来ず、2006年台湾で刊行され注目を浴びた。
 昨年チベットで大規模な抵抗運動が勃発したことは記憶に新しいが、長い間、
当局が沈黙を守ってきたチベットの文化大革命時代への民衆の鬱憤も、原因の一
端といえよう。強いられた忘却の替わりに登場する記憶こそが歴史であり、民族
の文化である。
 いまスポットライトが遠いチベットの闇を照らし始めようとしているのだ。
 かくして『殺劫』の日本語版が、藤野彰読売新聞編集委員と、日本在住の中国
人女性で新進気鋭の文筆家劉燕子の共訳により出版されることになった。初めて
公開された多量の貴重な記録写真を含む、四百ページを越す労作となっており、
当時チベットで吹き荒れた殺伐な大衆運動を、詳細かつ平明流暢な訳文で述べ、
中国少数民族の将来にわたる問題も提起している。
 原作者ツェリン・オーセルはいう。
「何千何万のチベット人が払った気高い犠牲が、北京五輪の見せかけの繁栄に呑
み込まれた。作家は発言しなければばらない。著述とは祈ることであり、証人に
なることである」と。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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