チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年9月21日
報道官サンペル氏との雑談
本日、朝10時頃法王は3週間に及ぶアメリカ、カナダツアーにお出かけのためダラムサラを出発されました。ほんの一週間前に長期遠征からお帰りになられたばかりなのに、又昼が夜になるアメリカに行かれるとは本当に心より御苦労さまです。
沿道にはいつものように大勢のチベット人たちが思い思いにカタ、線香、野花を手に持ち法王を見送りました。
実際チベット人の命運はそのほとんどを法王のご活躍に負っているわけです。
北米でのスケジュールを知りたい方は以下へ。
http://www.dalailama.com/page.60.htm
さて、法王とオバマ大統領との会談について、今日情報省のスポークスマン、サンペル氏に訪ねてみました。
以下彼のコメント:
「もしも、法王とオバマ氏の会談がないとすれば、先日ホワイトハウスのオバマ氏の側近であるValerie Jarrett女史がダラムサラまで来られなかったとは思わないか?
ただ、オバマ氏の中国訪問の後にしてほしいということだ。
11月中に会うことになるだろう。
実際、それより、私は今回アメリカ政府の正式な特使がダラムサラに来られ、法王と会談したことの意味は大きいと思う。
実際今までは、例えば亡命政府の総理大臣や外務大臣がワシントンに行ってアメリカ政府の高官に会おうとしても、我々は政府の庁舎内に入ることも許されなかった。
アメリカはチベット亡命政府を公式には認めていないからだ。
会えても、それは外のレストランのようなところだったりした。
それが今回あちらからわざわざダラムサラまでホワイトハウスの高官が法王に会うために来たのだ。これは大きな姿勢の変化だと思う。
クリントン大統領もブッシュ大統領も法王に会っているしで、オバマ大統領が法王に会わないということはないだろう。
オバマ大統領は黒人であるし、少数派で虐げられている者に特別の配慮を示すであろうと期待はしている。
とにかく今度法王との会談が実現すれば、中国に対する大きな牽制にはなるだろう。アメリカはチベットの後見人であり続けるぞ、と中国に示すことになるからだ」
私「日本では最近、長年政権を取り続けていた、自民党が大敗し、民主党という新しい政権になり、鳩山と言う人が首相になった。彼は嘗て法王に会ったこともあるし、チベット議連のメンバーでもあった。一般的には期待したいところだ、しかし、一方民主党内には中国寄りの議員も多い。日本の新政権に特別期待することはないか?」
サンペル氏「日本にはそれほど期待してるわけではない。日本と中国の間には歴史的な問題もあるし、経済的に大きく日本が中国に依存していることも知っている。
中国に近すぎてこちらの情報も伝わりにくいのかも知れない。
しかし一方、政府がそうであっても、民間の人たちは自由のはずだ、例えば新聞、テレビ、その他NGOメディアは公平な立場でチベットのことを伝えてほしいと期待する」
これを聞いて、同席していた某新聞社の方が「確かに。では例えば一つの提案だが、代表部が定期的でも不定期でもいいからたまには記者会見とか開いて、我々を呼んでくれるというのはどうか?そうすれば、こちらも書きやすくなるのだが」
サンペル氏「そうか、それはいい考えだ。T氏が近いうちにダラムサラに来るので、その話をしてみよう」
と、日本の話になったので、私は先進国中における日本の特殊事情、「普通の人は英語を解さない」ことを説明し、英語のチベット情報は今では溢れるほどあるが、日本語になるのはほんの耳くそほどで、それに引き換え日本人が漢字に強いせいか?「新華社伝」は丸ごと毎日大新聞社に伝えられ、、、情報戦にまるで負けている、もっと積極的に日本メディア戦略を考えてほしい、とか生意気なことをいったりした。
ついでに、例の上野で19日から始まった「チベット盗品展(一部は金を払ってサキャ寺とかから紳士的又は強制的に借りたとも聞くが)」の話をして、サポーターの多様な盛り上がり方と、一方主催者、後援企業などの倫理感のなさ、日本人一般の人権意識の低さ、臆病さ、、、右翼、左翼世代、等々、(日本の事をよく知らない私が)日本の特殊事情についても随分おしゃべりをしてしまいました。
二枚目の写真は、ネレンカン(難民一時収容所)に最近到着した子供二人。
最初のカメラを構えている子はギャンツェからお父さんに連れられて来た、6歳の男の子。お父さんは子供を置いてまたチベットに帰るという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)