チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年9月18日

法王のティーチング・9月15~17日

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色んな話が重なって、頭がぐちゃぐちゃです。早く出して空っぽにしないと。

ダライ・ラマ/オバマ会談については、オバマ氏が中国を訪問する前に会うことは(もちろん?)無理だが、そのあと11月にでも会いたい、と法王がリクエストされたということです。ITSNが「古参秘書官」の話として「実現される」、と報じたのを見て、私はこの「古参秘書官」はテンジン・ゲチェ氏のことかも?と思い、ティーチングが終わり、法王の後を歩く彼を捕まえ、会談の見込みについて聞いたところ、
「う~~ん、おそらく無理だろう、、、」との答えでした。
彼ではなかったようです。

15.9.09法王は昨日12時前に今回のティーチングを終わられました。
最後は「発菩提心(セムケ)」の儀式で、参加者全員(強制じゃない)に「菩薩になるぞ」という誓いを立てさせられました。
ティーチングも終わりダラムサラには菩薩が溢れ、やがて世界中にこの菩薩たちが散らばっていくという、誠に喜ばしい光景が目に浮かびます。

もっとも、日本人の中には「あの、、、今日膝をついて何か唱えたようですが、あれは何だったのでしょうかね、、、?」と聞いてくる人ももちろんいる。
「あれで、君は菩薩になる、菩薩の戒律を守るぞ、と誓ったのだよ。だから、君は今日から半分菩薩というわけだ。嬉しいかな、、?  もっとも意味が分かってない人は受けたことにはならないから、大丈夫だよ、戒律とかもないし、破ったといって地獄にいくこともないしね。まあ、それでいいんじゃない。君が特に何かに苦を認識しているようにも見えないしね」と私は良くそんな人に答える。

内容は空の見解を中心に相当濃いものでした。
いつものように外道、説一切有部、経量部、唯識派、中観派の其々の哲学学派の空に対する見解の差を中程度(各派の細分まで)に詳しく説かれ、されにタントラの空観について説明されました。
四諦により空意を説明され、四仏身により大乗の悟りの内実について説明され、最後に慈悲を説かれ、空・悲不二の行が大乗の行だと宣言されました。

15.9.09以下テキストのほんの一部だけ翻訳します。(マリア様訳参照)
中観派(帰謬論証派)が唯識派の見解を否定した後の偈。

菩提心釈論
第43偈 
要するに仏たちは
(自性を)見られたこともないし、見られることもない
自性を持たないという自性をもつものを
一体どうやって見られるというのか

第44偈 
事物とは概念であり、妄想である
妄想が無いことが空である
妄想が現れるところ
そこにどうして空がありえよう

第45偈
認識されるもの(客体)と認識する者(主体)という(二元の)の現れを持つ心を
如来たちは見ない
主客の存在するところに
菩提(ジャンチュップ・さとり)はない

第46偈
相が無いので、生じることもない
存在するようになるのでもなく、言葉の道を離れている
虚空と菩提心は
不二菩提(空)の相を持つ

第47偈
さとりの精髄に住する
偉大なる仏と
愛情深い者たちは皆、常に
空は虚空のごときものと御存じだ

第48偈
故に、すべての現象の土台である
寂静にして幻に等しい
底の無い輪廻の底を打ち砕く
この空を常に瞑想せよ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「宝の山に入っても、そこを宝の山とも知らず、何が宝とも知らない者は空手のままそこから降りてくる」、と確か似たようなことが仏典にも書いてあったと思うが、
ダラムサラには確かにいろいろな宝がある、善良なチベット人の心に触れることも宝に触れたことになろう、山や野鳥や花も?チベット問題も、しかし、何と言ってのこのダラムサラを宝(心の病気を癒し、完全な解放を得るための薬)の山にしているのは驟雨の如く降ってくる法王のティーチング(教え)の甘露だと思う。
皆様もできれば法王のティーチングのあるときにダラムサラに来られることを勧めます。今じゃ大抵マリア様の日本語通訳があるし、何と言っても登録代20円だけで参加できるのがいい。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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