チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年9月11日

9月19日より始まる上野の「聖地チベット ~ポタラ宮と天空の至宝~」展

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2008年ラサ 写真・野田雅也写真最初の二枚:野田雅也

9月19日より、いよいよ上野で「聖地チベット ~ポタラ宮と天空の至宝~」展が開催されます。主催者側の宣伝URLは以下。
http://www.seichi-tibet.jp/index.html

これに対しチベットを応援する人々は各グループごとに様々なイベントで真実を訴える活動を行うようです。
私は展覧会を実際に見た訳ではないので、一体何に問題を感じるのかについては何も言えませんが、どうも1950年以降の歴史について(不自然に)全く触れられていないことが問題の始まりのような気がします。
もちろん、チベット人から盗んだ盗品を恥知らずにも中国の宝だと言って入場料を取って外国で展示すること自体非難に値するとも言えますが。

この展覧会の興味深い裏情報のようなものが石濱先生のブログに載せられていました。
以下、(先生に断っていないので・恐る恐る)その一部を紹介します。
http://shirayuki.blog51.fc2.com/blog-date-20090907.html

ーーー

この展覧会はじつは中国政府のプロパガンダはカンケーなくて、民間の広告会社の企画で始まったのだという。その広告会社に勤める中国の人が、仲のいい民間の先生(チベット研究者ではナイ)と組んで、作品のいくつかを選定するなどしたため、この展示品は中国政府ではなくその先生の見立てである。
 カタログをつくる際にも、もちろん誰の圧力もないまま日本で編集したので、チベット研究者の小野田先生も一文をよせている。

 九州博物館に続いて北海道にも椎名誠さんは呼ばれたらしいし、美術展の主宰者も批判をかわすためにずいぶん考えている。

 で、ワタクシにこの情報を下さった先生は、「中国政府の圧力を受けないよう気を遣ってきたのに、今回のアクションで寝た子を起こすことにならないといいのですが。何にせよチベットの文化が日本で紹介されるのはいいことですよ」と心配されていた。

ーーー

2008年チベット 写真・野田雅也ヘーーーー!と、てっきり中国側が企画内容については指示しているのだろうと思ってた私などは、、、少し複雑な気持ちにもなり、ガッカリでした。
そうであるならば、中身の提示の仕方などに抗議する相手は中国ではなく日本のS先生とその取り巻きいうことになりますよね。
S先生は中国の歴史を専門にされる日本の、チベットの事など関心にない、おとなの先生なのです。ちゃんと最初から「中国政府の圧力をうけないよう気を遣ってきたのに、、、」
とおっしゃっている。「圧力は嫌だ、怖いから最初から真実を中国風に味付けしてます」と言ってるようなものです。

去年以前ならこれで万事、事無く終わったところでしょうか、S先生は去年以降の日本のチベットサポーターの台頭については御存じではなかったようだ。
チベットに気を遣わずに中国に一方的に気を遣った結果がどうなるか?皆さんが教えてあげるしかないようです。
もっとも、元を正せば、中国政府の脅しと金政策が自然に世界中の小心な学者をして歴史や文化を中国の意に沿った物に書き換えさせているのです。

日本は学者さんだけでない、政府も企業もそろって戦後は進んで大きな方に巻かれようとする傾向があるように思われます。

ランタン谷 キャンジン・ゴンパ内の仏像視点はまるで変わって、チベットの展示会というとタンカや仏像が中心であろうと思われます。
そこで、思い出されるのが、お経にも書かれていますが、法王は常に「仏像を前にするときは、その仏が石でできていようが、木でできていようが、大きかろうが、小さかろうが、稚拙で粗末なものであろうが、立派で美しいものであろうが、同等の信心を持って心から拝むように。仏の仏たる所以、その様々な徳を思い出し、自分の心を少しでもそれに近づける縁になることを願うのだ」とおっしゃっています。

つまり仏像やタンカは本来は美術品ではないのです。中世の所謂美術品は
ましてアートという作家の特異な感性を表出したものなどではなく、作者はおらず、どちらかと言えば逆に個人を滅するための行の結果なのです。

何れ、「仏を外に探して見つかるわけもなく。仏は心の中に見出すもの」といいますし、法王も「チベットの僧院や寺、仏像が壊されたといってそんなに嘆くな。僧院は無くても勉強はできる。仏像が無くても心に仏はいつもいる」とおっしゃっています。

仏像に手を合わせることを習わず、値踏みすることしか知らない中国人は可哀そうなものです。

みなさんもこの機会に、中国人がチベットの寺から盗んで日本までわざわざ運んで来てくれた、ありがたい仏像を純真に拝むことにより、「ブッダ」自身に新しい興味を起こし、法王の本など読まれる機会になればよろしいかなと思います。

その結論として(あるいは結論に至らなくとも)、慈悲を根本とする大乗精神を理解し、納得し、その精神に則り、苦しみの中にある同胞チベット人の現状を訴える機会にもなれば一挙両得です!?

もちろんチベット啓蒙活動には宗教には全く関係なく、普通にチベットを応援してるし人も参加大歓迎ですよ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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