チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年8月25日

チベット人遊牧民5万人が既に都市周辺部へ強制移住

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カム強制遊牧民移住村 写真・野田雅也写真左は野田雅也・カム地方のチベット遊牧民移住村

8月24日付RFA:
http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/china-settles-50000-tibetan-nomads-in-towns-08242009223109.html

中国の新華社によれば、この4年間にチベット各地の遊牧民49、631人が都市周辺に継続的に居住するための移住計画に従った。
さらに、今後中国はこの計画を推し進めチベット人遊牧民100万人を移住させると公表した。

中国はチベット人遊牧民を移住させるべき主な理由を二つ挙げている。
まず、チベット人遊牧民は牧草地が養える以上の家畜を飼っているため牧草地が荒れ、環境に悪影響をもたらしている。
そして、遊牧民は度々草を求めて住所を移動しなければならないという不便がある。

これに対し、亡命者のある者は、「これはチベット人の独特の文化、習慣の根本を破壊しようと言うものだ。環境と共存してきた遊牧民の生活を台無しにする政策だ」と訴える。

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この政策は実際我々がチベット文化と見做している多くの習慣(歌とか)の破壊に直接繋がりますし、強制的に移住させられた遊牧民たちは、その先一体何をして暮らしていくのでしょう。
アメリカインディアンやアボリジニと同様の男は酒と博打、女は、、、の世界が待っているだけでしょうか。いや、「こうなってもチベット人は違う」と思いたいのですが。

「遊牧民100万人」と言うのはチベット自治区だけの数字とは思えません。つまりチベットの全遊牧民を移住させようという計画でしょう。
そのあとに残った広大な土地はこっそり一体誰が頂くつもりなのか?

「遊牧民は年中移住の不便がある」というが、チベットの遊牧民と呼ばれる人たちのほとんどは半農半牧であることが多い。高度が高すぎて遊牧しかできないという地区でもほとんどは低地部に決まった家を持っており、夏場だけ遊牧を行うという生活だ。
「不便だ」なんてだれが言っているのか?
半農半牧でも遊牧民と見なされれば、農地まで取り上げられるのか?

とにかく、全くチベット人の人権を無視した、むちゃくちゃな政策だ。
世界は都市化を抑えようと躍起になっているというのにだ、中国はただただ管理し易くするためだけにチベット人を野生動物か何かのように扱う。
悲しいかな、中国が絶滅品種に積極的に指定しているこの種族が如何に世界の幸福増進に役立つ貴重な種かと言うことが全くこの粗野なだけの動物には理解できないのだ。

私としては、殺される動物だけでなく、その家畜たちの糞を養分に育って来た多くのチベットの高山植物はどうなるのだろう?との心配もあります。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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