チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年8月23日

スペイン、国際チベット裁判

Pocket

ナンパラ事件証人の子供が描いた絵スペインで行われている国際チベット裁判については以前より度々お知らせしています。

最近この裁判に対し中国政府が反応したことについてICTが報告のレポートを発表しました。
これをイギリスのeliさんが日本語に訳し紹介して下さっています。

以下、

中国、スペインのチベット訴訟に対して脅かす;スペイン最高裁、裁判官は、ナンパラ射殺事件を訴訟に含む旨を決定

ICT レポート、8月20日2009年

中国政府は新しく発表された書式声明で、スペイン最高裁により打診された中国政府要員の出頭要請を拒否するとともに、スペイン政府に対して、この画期的な最高裁によるチベット人の為の犯罪調査を”虚偽の訴訟”として、阻止するように要請しま
した。

この在マドリッド中国大使館による書式声明は、中国政府を相手取って2つのチベットに関する” 普遍的管轄権”を用いた訴訟がスペイン最高裁により受理されてから最初の書式返答。この” 普遍的管轄権”の原則により最高裁はテロや戦争犯罪、拷問、
人道に対する罪の関連が認められた場合には国際法というインターポールを通した刑の行使によって国境を越えて、個々の国の法律を乗り越えることを可能にする。

スペイン最高裁、Santiago Pedraz裁判官は中国司法部に対して政府要人の- チベット自治州共産党書記Zhang Qingli(張慶黎)を含む、 8人に対する、2008年以降から続く、チベットにおける抗議に対する武力による弾圧に関する罪による決定を告知した。裁判官は被告がスペインでの証言を拒否した際には、中国国内での尋問を許可する要請を中国司法部に提出していた。

また5月19日には、スペイン議会にて裁判官の司法権を明らかなるスペインと関連がある裁判にのみ活用できる動議が議会に提出され、チベットについての裁判の経過が危ぶまれましたが、中国の度重なる圧力にも関わらず、Pedraz 裁判官は先日チベット裁判が、2006年9月に起こったナンパラ峠射殺事件の調査を含むことを決定し、調査期間の延長を発表しました。この事件はチベットの国境を越えて亡命しようとした集団に向かって中国、国境警備隊が発砲し17才の尼僧Kelsang Namtsoが射殺された事件です。

これは明白な人道に対する罪に値する犯罪であり、7月14日Pedraz 裁判官による裁判の延長を述べた書式決定の中でも、裁判官は、再度インド政府に対してナンパラ峠射殺事件のチベット人生き証人の接見を求めインドへの渡航許可の要請をしています。

アメリカ人登山家Luiz Benitezは尼僧ら、僧侶らや子供達がナンパラ峠を越えて亡命しようとする際に、尼僧Kelsang Namtsoが背後から致命的な狙撃を受ける所を目撃しており、 7月17日にスペイン最高裁で Pedraz裁判官に証言しました。

中国の書式声明

Tibet Support Committee of Spain (CAT) とICTが入手した、6月16日付けでスペイン外務省に届いた在スペイン中国大使館による書式声明のコピーの中で、「スペイ
ン最高裁による虚偽の訴訟は、国際法によって守られてきた国家管轄権の原則違反であり司法共助条約によって、中国とスペインの間に交わされた犯罪協定に含まれていません。よって中国側としては今件に関するいかなる司法協力も拒否すると同時にスペインに対して国際法に基づいた責務を要求するとともに、中国とスペインの間に交わされた犯罪司法協定の違反を回避するため、迅速な処置をとり訴訟を直ちに停止させることを要請します。」

信用できるマドリッドからの情報によると、在スペイン中国大使館とスペイン関係者の間で交わされた口答でのやり取りでは 、もしSantiago Pedraz裁判官が中国に渡航すれば逮捕されるとあった。

在マドリッド中国大使館は同国司法部に送られた〔一国の裁判所が外国の裁判所に送る〕嘱託書を送り返し、6月16日の声明で「中国側としては今件に関するいかなる司法協力も拒否する」としました。

今回の起訴は2006年以降の問題を取り扱っており、特に2008年3月の俗に”春の動乱”と呼ばれる時期に焦点を当て、Tibet Support Committee of Spain
(Comite de Apoyo al Tibet) とFundacion Casa Del Tibet, Barcelonaによって起こされ、2008年の北京五輪の直前にスペイン最高裁によって受理されました。

AFP通信社 (May 5, 2009)が入手し発表した起訴資料には、”両国間の友好関係の上に立ち、要請に対し好意的な対応を望みます”とPedr醇@z裁判官は中国当局に宛てた手紙の文頭で述べ、2005年の結ばれた2カ国司法協力協定についてふれています。 また裁判官は起訴内容が立証された場合にはスペイン、国際法の双法で”人道に対する罪”に値するとし、先出のAFP通信社の報道によるとチベット人は当局(要請書に含まれる)により政治的、人種的、民族的、国家的、文化的、宗教的、または他の目的で、国際法の下で普遍的に受け入れがたいと認められる迫害を受けているグループであるという事実”と記述している。

現在スペイン最高裁判所では、6名の受命裁判官が” 普遍的管轄権” に基づきルワンダ、イラクやチベットといった国外の13件の訴訟を担当してい
る。その中の一人Baltasar Garz醇pn裁判官はガンタナモ捕虜収容所で起きた米国による拷問疑惑について調査中であり、今回のチベットの訴訟を調査中の Pedraz裁判官はガテマラで起きた集団虐殺に関連した疑いのある政府要人の国際逮捕状を発布しました。

もしスペイン議会で裁判官の司法権を明らかなるスペインと関連がある裁判にのみ活用できる決議が近日中に施行されることになれば、スペインの裁判官はスペイン国籍を持つ者が関連した訴訟か、被告がスペイン国内にいることが前提となります。もし、起訴事実が起きた国内ですでに調査されている場合には、訴訟は破棄されることになります。

この議会への決議に対してスペイン司法関係者は大きく反応し、刑法学講師でAntonio de Nebrija 大学の、スペイン人権協会総裁 Manuel Olle Seseは動議提出の数
日後に以下のように スペインの全国紙パイス(El Pais)に投稿しています。
普遍的管轄権” の成立と行使は人権を守る上で、国際社会におけるスペインの最も偉大な貢献といえます。国際法の存在は、受刑を良しとせず回避しようとする国家権力の為にあります。彼等は裁きを受けることもなく、また司法手続きに乗っ取って裁かれるわけでもない。彼等は普遍的正義を”おせっかい”と形容し反対しているのであって、国際刑事裁判所の法律に合意するわけでも、また、その力量を認めるわけでもない。この(” 普遍的管轄権” )行使の損失は被害者の負担になる。これらは国際社会の責任として正義に守られるべきである。実存する結果の得られる国際刑事裁判所がないという事実をふまえたうえで、この普遍的正義の行使をスペインのみならず、各国で行使することによってのみ、人間の尊厳を粉々にする重大な国際犯罪を裁くことができ、それはすなわち私達の責務です”(El Pais紙, 5月 23日).

スペイン人弁護士によると現在” 普遍的管轄権” を用いた起訴内容にはチベットのような人道に対する罪の他、国際テロやドラッグ密売があり、今回の議会決議がチベットの訴訟にどう影響するかが注目されます。

スペイン首相Jose Luis Rodriguez Zapateroに宛てた、国際チベットキャンペーン International Campaign for Tibet (ICT)、憲法上の権利のためのセンター(CENTER FOR CONSTITUTIONAL RIGHTS米国)他、ガテマラ、アルゼンチンやイスラエル の人権団体や司法団体の連名による公開書簡の中で、こう訴えました。

「スペインの決議(” 普遍的管轄権” 行使を国内にとどめる)が法律化されれば、世界中の、国際法のもとで最も重大な罪である大量虐殺、人道に対する罪や戦争犯罪の被害者達に重大な影響をもたらすことになります。これまで、これらの罪を裁き、また犯罪者になりうる相手に対しても、警報を鳴らして来た法律と責任と正義の必要性を、スペインは外交考察の引き換えにされないことを強く願います」

(6月24日付, www.fidh.org/OPEN-LETTER-TO-MR-JOSE-LUIS.)

全文はICT レポートでもご覧頂けます(英語):

http://www.savetibet.org/media-center/ict-news-reports/spanish-high-court-rules-chinese-leaders-must-testify-tibet and on ICT’s blog:

http://weblog.savetibet.org/2009/04/30/in-search-of-justice-testifying-on-tibet-in-madrid/

ユーチューブ動画インタビュー、チベットのための
訴訟に関わる弁護士。スペイン最高裁 http://www.youtube.com/InterCampaignTibet

Press contact:もっと詳しく知りたい方はICTプレスコン
タクトまで;

Kate Saunders

Communications Director, ICT

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)