チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年7月15日

パルデン・ギャツォさんに会った話

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昨日どなたかGoogle Earthでノルブの家をご覧になった方はおられませんかね?
感想をコメント頂きたいですね。
地図を起こして3Dで眺めると、あたりの雪山の高さが良く解ります。

ーーー

15.7.09 パルデン・ギャツォ氏1ところで、今日はパルデン・ギャツォさんに会って、やっと日本で再刊された本人の本を渡すことができました。

送って下さったY女史には遅れて申し訳ないことでした。
何度か自宅を訪ねたことがあったのですが、いつも表に鍵がかけられていて、留守とおもったのでした。今日、本人からこの鍵についての秘密を聞くことができました。
パルデンさんは瞑想とかもされるので、なるべく静かに過ごしたいと、携帯も持たれないし、外にもあまり外出されないのです。
鍵をかけ、いないと思わせているのだそうです。
本当に会えるのは、鍵の掛け方の秘密を知る人だけと言うわけです。

長く本のことは一旦忘れていたのですが、昨日パルデンさんの映画を見て、ぜひ本人に会いたいということで、ここまで来られた御夫婦にレストランで会い、これはいい機会だと昨日と今日パルデンさんに会うことになったのでした。

15.7.09 パルデン・ギャツォ氏2パルデンさんは全く変わりなくお元気でいらっしゃいました。
「自伝の再刊のために努力して頂いた方々にお礼を言っといてくれ。日本語の本を又見て、今日は嬉しいよ。さあ、お茶を作ろう、ゆっくりして行ってくれ。」
と、いいというのに、お茶の支度。

「日本ではゲンラ(先生、パルデンさん)の本は良く売れてるそうですよ!映画もまだ続けて上映されてるみたいだし、今日はこうしてわざわざ日本からゲンラの映画を見て感動したから、といって来られた方もいらっしゃる。すごいですね!」
ゲンラは少し耳が遠いので大きな声で話かけないといけない。

「おお、そうか、本当は今頃日本に行ってるはずだった。自分が行って本にサインすればもっと売れると言うではないか。でも、スケジュールの関係もあって、いろいろとうまくいかなかったのだ」とその時の事情を詳しく説明された。

「自分の手元にはこの本は無かったのだよ。前の日本語版は下のライブラリー(チベット図書館)に持っていった。そこには世界の25カ国語に翻訳された自分の本が全部そろっとるのじゃよ。フランス、ドイツ、イタリア、デンマーク、ポルトガル、韓国、、、、、」
と、よく覚えてるものだと思うくらい次々と世界の国名を上げていた。

最近は割りと暇にして、ダラムサラで朝、4時に起きて、五体投地の後、身体を洗って、仏壇を整え、そのあとは静かにお経を読んだり、瞑想したりして過ごされているそうです。

15.7.09 パルデン・ギャツォ氏3せっかくなので、一つだけ時事にちなんだ質問をしました。
「最近のウイグル情勢の急変についてコメントを」

「おお、ウイグル、シンジャンだが、基本的にはチベットと同じだよ。1949年に共産党ができてそのあとすぐにシンジャンは侵略された。モンゴルもチベットも同じだ。
その後一旦はチベットと同じでほぼ完全に鎮圧されていた。でも心が変わったわけじゃない。死に絶えていたのじゃない、今回もそんな溜まりに溜った怒りが爆発したのであろう。
でも、外国はみんな黙ってる。アメリカもヨーロッパも中国の悪さかげんは良く解っているのに、何も言わない。金で頬を撫でられてるようなものだ。

毛沢東の本を思い出す。それは毛沢東の5冊目の本で、死後に出版されたものだが、その中に<シンジャンに入る時には、決して武器を向けず、静かに笑顔で入るように。解放軍は現地の木一本でもみだりに切ってはいけない、と指示を与えた。
そして、シンジャンの人々は我々が彼らを助けに来たのではないかと思い、拍手で出迎えたのだ>というのがあるが、チベットも最初は似たようなものだった。毛沢東が如何に悪賢い奴かがわかるというものだ。

シンジャンの人たちはアメリカの政策を利用した中国によってテロリストにされてしまった。やってることはチベットと変わらない。平和的デモをしただけだ。
それに対し、中国が発砲した時、その時の反応も似ているが、あっちはもっと激しかったようだ。

どちらにせよ、嘗て独立国であったことはチベットと変わらない。侵略を嫌い独立を求めるのは当たり前のことだよ」

「チベットとの違いはあるか?」

「それは、チベットは仏教の国だし、法王の指導もあって非暴力が看板だが、あちらはそうでもないんじゃないか?確かに今は仕方なく非暴力でやってるが、機会があれば暴力、武力に訴えても独立したいんじゃないかと思う。そこが違う」

「中国は抑えつければそれで片付くと思ってるがそうはいかない。
例えばだ、去年日本に行った時、原爆が落とされた広島に行った。広島に原爆が落とされた時には私は17,8歳だったが、よくおぼえている。チベット政府は広島の犠牲者のために各僧院に金を出して供養の祈りをさせたものだった。その広島だが、すっかり立派な街になっていたのには驚いた。いくら、アメリカがやっつけたつもりでも、ちゃんと生き返るという証拠だ。例えばこの私だが、中国はあれほど長い間、自分を傷めつけたが、どうだ、私はこのようにまだ元気に生きている。心は全く変えられていない。人の信念は暴力では破壊し得ないという証拠だよ。中国の今のやり方でシンジャンの人たちの心を変えることは到底できないであろう」

とおっしゃっていました。

また、近いうちに日本に行きたいとも言っておられました。

別れ際に一人ずつカタと首から下げる法王の写真付きペンダントを頂きました。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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