チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年4月30日
法王のボストンでの記者会見より
法王は昨日ボストン第一日目、昼食の後45分間、記者会見に応じられました。
以下は亡命政府リリースからの抜粋です。
http://www.tibet.net/en/index.php?id=882&articletype=flash&rmenuid=morenews
法王はハーバードには最初1979年に呼ばれたと話され、法王の二つの誓願「人間的価値と宗教間の調和促進」について語られた。
法王は「例えば(人間的価値促進の)その一つの例として、メディアの人たちはこの経済危機の中における人々の態度をよく観察してみるとよい。
常に、夢の中でさえお金のことばかり考えている人々はこの状況の中でさぞ心落ち着かないことであろう。
一方、お金の価値以外の他の価値、調和や人間家族や人間コミュニティーの価値により多くの関心を持っている人たちは比較的落ち着いていることであろう。
機械は幸せを作り出すことができない。
人はもっと自分たちの心と意識に対する深い洞察を必要としている。
この20年間、(人間的価値促進のために)慈悲の問題や慈悲と健康の関係などにつき科学者との対話を続けてきた」
等話された。
宗教間の調和の話の中で、
「西洋社会は概ねキリスト教と若干のイスラム教徒によって成り立っている。
だから、私は(西洋人が仏教徒に)改宗することを勧めないのだ。
友人の中にはヨーロッパやアメリカに仏教の僧院を建てようと思っている者もいるが、これには私は積極的に賛成しない。仏教的土壌のあるアジアなら賛成するのだが」ともコメントされた。
記者からの「チベットの自治を獲得する戦いには負けたのではないか?」
との質問に対し
法王は「狭い視点から見れば、確かにチベットの状況は絶望的にさえ見える。
しかし、視野を大きく持てば希望はある。
チベット人魂(Tibetan spirit)は非常に強い。
中国自体も変化して来ている。
今では中国共産党は共産党的思想の抜けた資本・全体主義体制となっている。
これは大きな変化だ」
と答えられた。
別の記者からの「チベットの地の上に再び立たれることがあるのか?」との質問には
法王「Oh. Yes, I feel.チベット人なら誰しもそう感じている。
チベットの中にいる人たちもその時を待っている。
1983年に初めて私はチベットを訪問したいと表明した。
1984年には翌年の訪問を準備するために中国に特使も送った。
(その前に送られた)事実調査団はチベット人に熱烈に受け入れられたので、自分も正式に行こうと思ったのだ。
しかしその後中国とはうまくいかず、訪問も実現されなかった」
「仏教徒として、私はチベットの諺にもあるように<何処であろうとも、幸せがあるところが自分の家。誰であろうと、親切にしてくれる人が父母だ>と思ってる」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)