チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年12月7日

80歳を超えたチベット人に7年の刑

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<80歳を超えたチベット人に7年の刑> http://phayul.com/news/article.aspx?id=23366&article=Octogenarian+Tibetan+Sentenced+to+7+Years’+Imprisonment

人権ウォッチ(HRW)は昨日、「国際機関は中国政府に対し、81歳になるチベットの伝統印刷職人パルジョル・ノルブ氏に対する秘密裁判と投獄を非難し、彼の即時解放を要求すべきだ」との声明を発表した。

HRWによれば、ノルブ氏は今年10月31日ラサの自宅から突然警官により連れ去られた。
チベット国旗を含む<禁止物>を印刷したという容疑をかけられたものと推測される。
拘留期間中、司法当局は彼の家族に対し拘留されているかどうかについても回答を拒否し、容疑についても知らせなかった。

HRWによれば、彼は11月中に秘密裏に裁判にかけられ、7年の刑期を言い渡された。
刑期を知らせる手紙が家族の下に送られてきた。
ノルブ氏の行方は依然不明だ。

「中国共産党の明らかなお墨付きのないチベットの物は、何でも<禁止物>になる」とHRWのアジア局長のソフィ・リチャードソン氏は語り、さらに「しかし、政府がその思想を弾圧したいがために、旗とか、本とか、絵を印刷した者が投獄されるべきではない。だから表現の自由は基本的人権だと言ってる」とも語った。 ノルブ氏は、僧院のために経典を印刷するという長い歴史をもった家族の末衞である。
彼は(経典印刷の分野では)世界的に有名な彫師である。
彼は自身の工房で伝統的木版と現代の技術を融合させ、現在では数十人の職人を抱え、経典だけでなく、タルチョ、伝統的作品の複製、書籍、ちらし等の印刷、伝統文学書の再版などを行っていた。

ノルブ氏が逮捕された後、警察は彼の工房を閉鎖した。
入口のドアには閉鎖を告示する張り紙が張られ、職人の帰職を禁止した。
警察は工房から木版や書籍を押収した。

「ペルジョル・ノルブ氏を罰する代わりに、中国政府は彼の歴史、文化保存に対する貢献を表彰すべきだ」とリチャードソン氏。

ノルブ氏には、中国の憲法で保障されている、罪人に対する最低の権利も与えられていない。
警察は家族に対し正式な逮捕についても、裁判の日付についても知らせなかった。
どこに居るかも知らせない。
裁判で弁護人を選択することもできない。
裁判の詳細が公表されない。
今どこにいて、これからどの刑務所で刑期を送るのかを家族に知らせない。

HRWはさらに、この数週間<表現の自由>に関すると言える、チベット人の逮捕、有罪判決が増えているといい、中国は3月以降のデモの参加者だけでなく、その弾圧の対象を広げようとしている現れだとコメントしている。

その他のケースとして:

ラプラン僧院の老僧ジグメ・ギャッツォ師は外部に、3月に逮捕された後、どんな拷問を受けたか、及びガンス(甘粛省)地区で拘束されている仲間の名前等を漏らした、として11月4日再逮捕された。

ホンユアン県(四川省)の司法事務所に勤務していたノルジン・ワンモ女史は、海外に居住する親戚にチベットの状況を話した、として11月3日、5年の刑を言い渡された。

チベット各地で密かにドキュメンタリー・フィルムを制作したドゥンドゥップ・ワンチェン氏は3月に青海省のトンデで逮捕された後、現在は西寧のエルシリプ拘置所に収監されている。

ーーー

それにしても、81歳の老人を7年の刑にするとは!
監獄で死ね、と言うわけです。

もちろんこの哀れな老人だけではない、千人を超える政治犯が今も、その極寒の獄中で理不尽な苦しみを味わい続けている。拷問はチベットの監獄では日常事だ。

みなさん、アムネスティの人も一緒に、まずはこの大切な老人を救おうではありませんか。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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