チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年10月30日

ダライラマ法王特使北京に出発、法王の発言

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12465177.jpg昨日ダライラマ法王はダラムサラを離れられ、一路日本に向かわれた。
日本への到着は11月1日ですよね?

ちょうど<チベット・中国第8回会談>のためダライラマ特使のギャリ・リンポチェとケルサン・ギェルツェン氏も30日北京に向かった。
福岡と北京は目と鼻の先、法王は北京を睨みつつ日本のファンに説教をするというわけです。

日本発の情報を世界が注目することでしょう。
日本の皆さん情報教えてくださいね。
法王が会談の後に東京で記者会見をされることを期待します。

今回の会談については、中国側が初めて会談の前に、この会談について発表しています。
今までなら、特使がダラムサラに帰り記者会見を開くまでは、中国は何も発表していませんでした。

http://phayul.com/news/article.aspx?id=23103&article=Tibetan+Envoys+to+Hold+Eighth+Round+of+Talks+with+China+Soon今回は特に「会談のイニシアティブを取ったのは中国であり、法王側ではない。
今回も会うし、次回もあるであろう」とオープンな姿勢をアピールしています。
ここは法王のこの前の「対話はうまくいっていない。期待できない」を意識しての発言でしょう。

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何かと、注目を浴びた「ダライラマ法王のTCVでのスピーチ」がまだ抜粋ですが、phayul.comに英文になり掲載されていました。

Y女史が相当長い文章を訳してくださいました。

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http://phayul.com/news/article.aspx?id=23103&article=Tibetan+Envoys+to+Hold+Eighth+Round+of+Talks+with+China+Soon
His Holiness’ Remarks on Tibet Misquoted: Office
Phayul[Wednesday, October 29, 2008 12:19]
法王の発言をめぐる誤った引用について: 法王事務所
パユル 10/29/2008

【ニューデリー 10月29日】 ―
ダライ・ラマ法王事務所は昨日、10月25日に行われたTCV子供村設立48周年記念式典における法王の発言に関して、補足説明を発表した。
法王事務所のサイトでは、いくつかのメディアの報道でダライ・ラマ法王の発言が文脈を無視して引用された、と述べている。

法王事務所は、以下のように説明している。
「ダライ・ラマ法王の発言では次のように述べています。『チベット問題に関して、チベット側は長い間、チベット人にも中国人にも受け入れられるような解決策を導き出すために、努力を重ねてきました。
こうしたチベット側の姿勢は、各国の政府を含む国際社会から幅広い支持を受けています。
さらに重要なことに、大勢の中国の知識人達からも支持を得てきました。』」

「法王はさらに、次のように続けています。
『残念ながら、中国指導部はこれまでのところ、私達の提案に対して前向きに応えようとはしていませんし、この問題に現実的な方法で取り組む意志ももっていないように見受けられます。
今年の3月から、ラサやその他の多くの伝統的なチベット人居住地域では、一連の抗議行動とデモが発生しています。
それらは明らかに、50年以上も続いてきた中国共産党による抑圧的な支配に対して、チベットの人々の中に深く刻み込まれた憤りや不満が、自然発生的に表われ出たものでした。』」

「中国政府が、ダライ・ラマ法王がチベットにおけるこれらの抗議活動を扇動した、と非難して以来、法王は中国政府の主張の真偽を完全に実証するよう求めてきました。
ここインドにおけるチベット亡命政府の文書や記録さえも調査していい、と申し出てさえいたのです。
にもかかわらず、これまでのところ法王の提案はまったくとりあげられず、チベットにおける状況は日ごとに深刻さを増しています。
したがって法王は、現在の中国指導部が真実、理性、常識をかえりみない現状のままでは、その重責を背負い続けることは困難である、と述べたのです。
中国指導部から建設的な返事が得られない状況にあって、法王は、双方が納得できるようなチベット問題の解決策を粘り強く求め続けてきたけれども、その努力が実を結んでいるかのようなふりをするわけにはいかない、と感じているのです。」

以下は、10月25日の法王のスピーチを抜粋・英訳したものです。

<中国・チベット関係および11月の特別会合に関するダライ・ラマ法王の発言
-10月25日のチベット子供村設立48周年記念式典における法王のスピーチより抜
粋>

先ごろよりチベットは、危機に直面しています。
チベットの伝統的な三つの地域全土にわたって、チベットの人々は勇気をもって、中国政府に対する不満を表明し、長い間抑え続けてきた憤りを噴出させました。
これは僧侶や尼僧のコミュニティに限られたことではありません。
党員、学生、中国本土で学んでいるチベット人学生さえも含めてあらゆる世代にわたり、仏教信者であるか否かを問わず、大勢の人々が、不満や憤りを表明したのです。現実問題として、中国政府はこの時、事実を無視するわけにはいかず、現場で起きていることに対して適切な方策をとるべきだったのです。
けれども、中国政府はそうしませんでした。
チベット人の心からの願いを完全に無視し、抗議行動を行ったチベット人達に「分離主義者」「政治的反抗者」などといった様々なレッテルを貼っては、弾圧し続けたの
です。

チベット域内の大勢の兄弟姉妹たちが甚大な犠牲を払っているこの危機的な状況にあって、自由な世界に住んでいる私たちが、まるで自分の国に起きてきた事柄を忘れ果てたかのように沈黙を守り、何もしない、というわけにはいきません。

今にいたるまで、私たちは、チベットと中国の両方に利益をもたらすよう尽力する、という立場をとり続けてきました。
そのため、インドを含む世界中の多くの国々から賛同を得てまいりました。とりわけ、中国の知識層の人々の間でも、私たちのアプローチは支持を広げつつあります。こうした現象は、じつに私たちにもたらされた勝利といえます。
チベットの中に好ましい変化をもたらすことは、単に私たちの根本的な義務であるにとどまりません:これは、私たちの究極の目標でもあるのです。
けれども、悲しい現実として、私たちはこの目標を達成することができずにいました。
そこで私は、1988年にストラスブルグで、ヨーロッパ議会での最初の発言の機会において、「チベット問題に関する究極的な決定は、チベットの一般人によってなされるであろう」と言明したのです。

1993年に、中国政府と私たちの間の直接交渉は終わりを告げました。
私たちは再びチベットの一般の人々と、可能と思われる最上の方策について協議しました。
そうして、以前と同じ方針を続けるという決定がなされたのです。

チベットに共通する利害・要因は、チベット人全体の福祉に関わっています。
それは私個人の問題ではまったくないのです。
ですからチベットの人々全体がチベットの公(おおやけ)にとっての善に基づいてこの問題を熟慮し、それにしたがって決定する必要があるのです。
別の角度から見れば、私たちはまさに最初の時点から、自分たち自身で純然たる民主主義の途をたどってきた、ともいえます。
過去には、チベットは民主主義を標榜せず、王制主義を採用していた時代もありました。
ですが、今という深刻な分岐点にあっては、チベット一般の人々のどのような提案や見方、意見であってもとりあげて、十分に議論しなければなりません。
これは、特定の政党のイデオロギーや政策を賞賛したり、異なる政治的な立場を明確にするためではなくて、私たちの根本に関わる大義を実現させるうえで最上の方法を検討するために、なされなければならないのです。

すべてのチベット人は、一般人であれ僧籍の者であれ、私たち国家のアイデンティティを堅持するために努力しなければなりません。
概して、チベット国家のアイデンティティの維持は、地球上の他の国々や国民のものとはかなり異なっています。
もしチベット国家のアイデンティティがよく保たれるのであれば、その価値システム―愛と慈悲という仏教の信条に基づいています―は、世界全体にとって有益となる資質を内在させている、といえます。ですから、真実を求める私たちの闘いは600万人のチベット人に利益をもたらすだけではなく、全世界にある程度の善をもたらす私たちの能力と密接に結びついているのです。
このように、私たちの真実の闘いは、その背後に理由があるのです。将来、もし真実を希求するチベット人の闘いが平和裏かつ適切に解決すれば、それは確実に、中国を含む何百万人もの人々の助けになることでしょう――人々が精神・肉体両面における幸せを保ちながら、より健全で有意義な人生を送るための新しいビジョンを発見す
るために

一方、もしチベットが、中国によってチベットの宗教と文化を―その根底にあるのが慈悲ですが―完全に抹消されてしまうことによって、物質的な利益だけを追求する社会に変貌してしまうなら、それは中国の人々の利益になるどころか、彼らの未来の喪失につながることでしょう。
したがって、私たちのこの闘いは実のところ、関わっているすべての人々のためになるものなのです。
これを実現するために、私たちは自分たちにできうる限りの手段や方法をよく考えて、話し合わなければなりません。私は皆さん全員に、そうすることをお願いしています。
なぜなら、これは私たちチベット人すべてにとっての善に関わる問題だからです。

中国政府は、最近のチベットの不穏な状況を扇動したとして、私を非難しています。私は、中国政府に対して直接意見を表明すると同時に、北京はこの件に関して詳細な説明を提示するべきだ、と公にもアピールを行なってきました。
これらの意見表明やアピールにおいて、私は、中国政府は調査チームをダラムサラへ派遣して私たち亡命政府や役所のファイルを調べてもよい、と述べてきました。
私のスピーチや最近チベットから到着した者たちの証言を記録したテープを調べて
もよい、とも提案しました。
ところが、今にいたるまで、調査隊はこちらに派遣されてきていない。にも関わらず、中国は私への非難を投げ続けているのです。

こうした経緯を考慮するにつれて、私自身が現在の立場を保ち続けることは、チベット問題の解決を促しているというよりも、むしろ障壁を生んでいるように思われてまいりました。
それゆえに、チベットにとって共通の善に関する問題は、チベットの人々によって決定される方がよいのでしょう。
この問題において、私が干渉する必要はないのです。

9月11日、私は、自分にはこれ以上、この問題について責任を負うことはできない、と決意するに至りました。
自分がこの責任を負い続けていく、有益な目標を見出せないのです。しかしながら、もし中国指導部が誠実に話し合いに向き合うのであれば、私はまた、この責任を背負う立場に戻るかもしれません。
その時になれば、私はまた彼らと真摯に関わるでしょう。誠実でない人々と関わっていくことは、たいへん難しいものです。ですから、ここで、報道機関を代表する皆様にはごく率直に述べたいと思います。
私は、中国の人々を信用し、信頼しております――しかしながら、私の中国政府に対する信用と信頼は、小さくなりつつあります。

私は、選挙によって選ばれたチベット人の指導者たちに、特別会合でこうした点を議論するよう要請しました。
この問題は、緊急会議の召集によってすぐに解決できたりはしないと感じています。しかし、重要な点は、すべての人々が責任を負うべきである、ということです。私たちの大切な目標を実現させるために、すべての人々がこの問題に鋭い関心を保ち、実施可能な行動を起こすと同時に、この問題を解決するための手段や方法を真剣に考え出さなければならないのです。
言い換えれば、すべてのチベット人は、人々の長期的・短期的利益を十分に考慮に入れながら、私たちの目の前の問題を、共同責任の精神のもとで議論し、取り組んでいかなければなりません。最終的な、実際の決定は、チベットの人々によってなされるべきなのです。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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