チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年7月30日
僧院解体、闘争集会、ネパールでも死のハンスト
いよいよ中国側は僧院の完全解体を始めたようだ。
「闘争集会」という文革時代の恐怖を代表するような言葉も出てきた、
言葉以前にもちろん50年間この実態は続いているのだけど。
連帯委員会リリース 2008年7月29日Y女史訳
http://www.stoptibetcrisis.net/pr290708.html
<僧院制度及び僧侶人数制限規定>
状況の進展に詳しい情報筋によると、四川省チベット族自治区カンゼ県の人民行政府は先ごろ、「問題ある僧院および僧侶・尼僧への厳格な対応に関する指令原則」と題した12項目を含む法令の公式発表を行った。
例えば、特定の僧院にて10~30%の僧侶・尼僧が抗議行動と関わりがあると発覚した場合として、この法令では次のような広範囲にわたる権限、罰則が規定されている――自宅軟禁、拘束警察による手入れ、捜索、容疑者の即時逮捕、宗教行事の制限、僧侶・尼僧の僧院からの外出制限等。
民主運営委員会(僧院内における共産党指定の監視役)のメンバーに任ぜられた僧侶達が関わっているのが発覚した場合、彼らは直ちに「改革・矯正reformed」させられる。
法令ではさらに、僧院を「清掃」しようとする当局の指令に従わない者は直ちに僧院から追放されるべきであり、その精神的な人物としての権利は消滅させられて、宿泊施設も破壊される、と述べている。
また、僧院における僧侶・尼僧の数を大幅に減らそうという意向も示している。
もし僧院の所属者が抗議活動等に関わったために僧院が閉鎖される場合、民主運営委員会などの僧院指導達自身が責任をとらなければならない、といった脅迫じみた文言もある。
法令はさらに、高僧や僧院長、トゥルク(転生者・活仏)への掌握を強め、彼らに一般の僧侶を監視・統制するよう要求している。
さもなくば愚鈍で非協力的な者と見なされ、二面性のある行動をとった場合は、僧侶の集会で自己批判のための「闘争集会struggle sessions」(タムジンという言葉を使ったかどうかは不明)を義務付けられ、自分の「過ち」を文書化して認めなければならない。
民主運営委員会に任ぜられたトゥルク(転生活仏)やゲシェー(仏教博士)らが抗議を行った者の活動を支持・協力していたことが発覚した場合、彼らは厳格な処分を受け、中国人民政治諮問委員(CPPCC)や仏教徒協会の一員としての地位を剥奪される。また、その時点以降の宗教活動を禁じられ、転生の権利も失う、とその法令では規定している。
チベット域内の安定を保つために施行されるというこれらすべての施策を注意深く検討すれば、上記のような僧院「清掃活動(cleansing)」の目的は、僧侶の数を減らすことで僧院のコミュニティを統制下に置き、最終的には歴史あるチベット仏教文化を完全に消滅させることにあるのは、明らかである。
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それにしても何という言葉使い「粛清」は「清掃」、脅迫により嘘を強要することに成功すると「改革」が達成されたという。
唯物論とはよく言ったものだ、まるで人を平気で「物」として認識するらしい。
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続き:
最近入った情報によると、カンゼではチベット人の若者によって、3つの抗議行動が行われた。
それらの日付と抗議した者の名前は次の通り。彼らは全員、治安部隊に逮捕され、その場で長い間殴打されたという。
6月22日:ニマ・タシ(36歳・ジダ村出身)とその仲間ニル(35歳・ギュルガ村出
身)
6月21日:ニマ・タシ(16歳・ジダ村出身)
6月14日:ジャンパ・タシ(24歳・ツァンカ村出身)
また、6月一週目頃には、ガワン・タシというもう一人のチベット人が別の容疑で
逮捕されている。
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<29日、カトマンドゥでも死のハンガーストが始まる>
29日付のphayul.comによると、
http://phayul.com/news/article.aspx?id=22135&article=Released+Tibetans+begin+fast-unto-death+in+Nepal
7月29日、
<中国共産党指導部とダライラマ法王の直接対話の即時開始>及び
<チベット人に対する弾圧の即時停止>
の要求を掲げ、
9人の尼僧、17人の僧侶が
<無期限ハンガーストライキ>に入った。
場所はカトマン市内から数時間のラリっト市にあるチベット難民キャンプの中。
彼らは先日チベット帰還行進を中国国境を目前にして逮捕されたグループにいた者ばかりだ。
彼らは釈放された数時間後に、この<死のハンスト>を始めたという。
いずれ彼らはチベット帰還行進を決心した時点で死を覚悟していたのであろう。
法王と中国との対話を要求するとともに、
「極端な政治教育とチベットの宗教に対する介入を止めてほしい。これらが今のチベット問題の元凶なのだから」
「チベット人に対するすべての弾圧を、不当逮捕と拷問を止めてほしい」
「直ちに国際調査団をチベットに派遣してほしい」
と訴えています。
記事の中このハンストは水も断つのかどうか?については書かれていません。
と言うことは今のところ水は飲んでくれそうです。
しかし、今のネパール政府は再びお先真っ暗状態。
警察は中国の金でいくらでもチベット人を殴る。
せめてこのまま静かに水を飲みながら、(数年間)続けられることを祈ります。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)