チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年3月24日

街中の張り紙

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7796a88a.JPG写真は2枚とも街の張り紙です。

 ダラムサラからは、街中に張られているいろんな張り紙から、2枚選んで撮ってくれたものがメールで。
 1枚目は、下の引用にもあるけど、西北民族大のデモだそうです。顔! 顔出てる!! と焦ったけど、印刷された張り紙を撮った写真だからさすがに拡大してもディテールわかんなくなってたのでほっとしてこのままアップ。
 西北民族大はチベ友の1人(日本人)がかつて留学していたところ。その友人からは「もう信じられない」と泣き出しそうなメール届きました。うん、私も、もし、西南民族大(←私が留学してたところ)でデモ、とか聞いたら絶対泣く。もう考えただけで泣く。

 そんで、張り紙の写真みてまた涙。
 デモ、って、ただ並んで歩いてるだけじゃん。チベット国旗も、フリーチベットのなんかの意匠も、彼らには手に入れるすべさえなくて、Tシャツに手形で何か表現したりしてみたんだ、きっと。こんなのが「組織的国家反逆罪」?で逮捕されちゃう国って、どうよ、もう。

 もう1枚は日本語。
 チベット語か英語で張られた張り紙を、訳すことのできる日本人Yさんが、日本人に読めるように、打ち直して張り出したんだそうです。
 ああ、もったいない、ダラムサラの日本人にももちろん読んでほしいけど、データごと原本の張り紙と一緒に日本に送ってくれー、TSNJのサイトでもどこでも、上げて皆に読んでもらうから……。

  1枚は3月16日夕方、蘭州にある西北民族大学の1000人以上の学生がデモした時のものです。チベット語で彼らの叫んだスローガンが書かれています。
 <チベットに自由を!><チベットに民主主義を!>
 そしてもうひとつは<チェソクニラプチェンイン>とあります。
 訳せば、<この身一つが武器なのだ!>となりましょうか。つまり素手で命をかけて訴える、ということでしょう。
 彼らが今どうなっているかは考えるのも恐ろしいことなのです。
 多くのチベット人が命をかけて叫んでいます。まずは世界はこの声に耳を傾けるべきです。
 22日にも、カムやアムドの町や村で数百人規模のデモが起きているというニュースが入っています。アムドのマルクルタンでのデモでは、デモ隊と武装して待ち構える警備隊が衝突する直前、地元で尊敬を集める高僧が間に入り、衝突は免れた、というニュースも入っています。

 もう一枚はアムド5区の報告です。Y….さんが日本語にしたようです。転記するのが面倒なのでこのまま読んでみてください。自殺者の名簿とかね、、、

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 一方で。
 自由の国であるはずの日本にいてさえ、表だって声を上げられず、ただ涙を流しているチベット人も多いのです。
 「家族に電話したら○○○と言っていた」――そう言うだけで、本土の家族は、外国の“反革命分裂主義者”に情報を提供したとして「国家分裂罪」に問われかねない、そもそも海外からの着信記録はすべてマークされ、通話はすべて録音される、という。
 先日会ったチベット人の友人たちも、「○○さんが『もう掛けてくるな』と言われたそうだ」「○○さんも『電話は危ない』と言われ、電話はすぐ切れたらしい」と不安そうに情報交換していました。
 友人から届いたメールに涙。

 チベット人が望む、そしてダライラマ法王のおっしゃる中道の道を貫き通し、一番いい形で終結することを心から願ってやみません。
 今日、故郷に連絡をしたところ、寺院と学校は軍に包囲されているということでした。
 そして、学校のチベット人の先生が急に亡くなったとの知らせもありました。
 昨日の夜まではとっても元気だったとのこと、心臓病(心不全?)だということですが、信じられません。
 そしてチベット人はどこへ行っても白い目で見られる、とも言っていたようです。
 チベット本土にいるチベット人が、これから先、かなりつらい状況に置かれることは、目に見えています。それを日本で活動している人にも伝えてください。
 ルンタの名のごとく、風の馬がチベットに本当に平和を運んでくれることを心から祈っています。

(うらるんた一部削除及び補足追記)

 どこにいっても白い目でみられる、というのは、差別や偏見を受けている、という意味ではなく、どこにいても何をしていても暴動を計画しているのではないかという疑いの目でみられ、何かそれらしいことがあったら通報して抑え込もうと考える漢人や当局側の人たちがいて、チベット人同士の会話に隣の人が耳をすませていたり、海外からの情報を集めているのではないか、法王の写真を持っていないか、監視されている状態にある――ということかもしれないと思う。
 海外に家族がいるチベット人や、海外に行った経験のあるチベット人は特に監視が厳しい、とか、自宅に家宅捜索が入った、とも聞きます。

 もうひとり、表立って声を上げられない――本土出身のチベット人男性と結婚した友人からも。

 旦那は「チベット人は死ぬ事を全く怖がってないから、これからも死者は増えると思う」と言ってます。目に涙いっぱいうかべて黙ってご飯食べてる旦那にかけてあげる言葉もみつからず、つらいです。

 いてもたってもいられない、何もしないと他のチベット人から「なんでだ」って言われるかもしれない、と言ってましたけど、出身とか境遇とか家族の仕事とか国籍とか日本のビザとか……状況は一人ひとり違うのだから、耐えること、待つことも「抵抗する」手段の一つだから。できる人ができることをします。SFTのツェリンドルジェ君とかはそういう気持ちで自分が名前と顔を公表したんだと思います。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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