チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年3月29日
情報消耗戦
昨日から、町の壁新聞に貼られた写真です。
もしかして、もう見られているならすみません。
カナダ発です。中国兵がそれぞれ僧衣を抱えている写真です。これは<僧侶の暴動>を中国が演出した証拠だとしています。
メールからするに、ダラムサラはこの写真の話でもちきりのよう。
(3月31日追記して公開)
この写真を引用した記事は、その後、日本でも話題になりました。
チベット僧になりすまそうとする中国警官の写真がイギリスのメディアでさらされてました。
http://buddhism.kalachakranet.org/chinese-orchestrating-riots-tibet.htm
(3/30)
buddhism.kalachakranet.org/の発信元はよく分からなかったけど、サイトを見ると、記事を発信しているのは「Canada Free Press」。ただ、ダラムサラのチラシと同じ写真には、こっちはキャプション(説明文)がついていて、
This is not an uncommon ‘tactical move’ from the Chinese government, as could be seen on the back-cover of the 2003 annual TCHRD Report This photo was apparently made when monks refused to play as actors in a movie, so soldiers were ordered to put on robes.
(これは中国政府の珍しい“戦略的移動”ではなく、2003年発行のTCHRD Report(チベット人権民主センター年次報告書)の裏表紙にあるもので、映画撮影の際に僧侶が役者として演じることを拒否した際に軍人が僧衣を身に着けるよう命令された)←ひどい和訳ですいません
となってます。
ダラムサラから送られてきたチラシの英文、ちゃんと読んでないんだけど、上の説明と食い違っているようで、なんとなく不安。まち全体が、ざわざわとした雰囲気の中、テレビやラジオだけでは情報が不足していて、壁新聞への張り出しや、友人知人からの口コミで情報が広がっているんだなあ、と思います。(写真は、一緒にもらったダラムサラの街中の様子。いつもは「ボランティア募集」とかレストランの宣伝、イベント案内なんかが貼られている道沿いが、壁新聞コーナーになってます。ついでにXXちゃんも^^)
本当の出来事や真実が公的メディアに決して載らないチベット本土では(いや、中国では、と言い換えてもいいかもしれない)、新聞やテレビなんてものよりも、人から聞いた話のほうが数倍正しくて詳しくて、野火のように、風のように広まっていくものなんですが、今はやっぱり状況が状況で、ネットもあるから情報源が錯綜して、いろんなものが入ってくるんだろうなあ。
中国側にコントロールされた情報ばかりが先行しているせいで「今ある情報は信じられない」という雰囲気があって、ある意味チベット寄りの情報に飛びつきやすくなってるのだろうけど、何もかもが中国政府(と漢民族)のせいで仕組まれたことで、チベット人は絶対的に正しい(人を殴ったり焼き討ちをしたり略奪したりしない)と思い込むのは危険じゃないかと思う。まぁ、中国側は逆に、国内向けに「欧米メディアは事実をねじまげて報道し、中国の国威を貶めている」というキャンペーンを張りはじめたようで、なんかね、もう。
____________________________________
チベット亡命政府「ラサで数千人規模のデモ」
2008年03月29日23時31分
インド北部ダラムサラにあるチベット亡命政府によると、中国チベット自治区ラサで29日、再び大規模なデモがあった。14日に騒乱が始まったラサはその後、当局の鎮圧で抗議行動は収まっていた。
同政府によると、29日午後2時ごろ、チベット人らが市内中心部のラモチェ寺の前に集まってデモを始め、数千人規模になった。しかし、中国軍の車両によって中止させられたという。
http://www.asahi.com/international/update/
0329/TKY200803290275.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)