チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2017年7月30日
ダラムサラで焼身抗議・死亡
運び出される遺体
昨日、7月29日、現地時間午後3時ごろ、チベット亡命政府とダライ・ラマ法王庁がある北インド、ダラムサラで1人の男性が焼身を行った。場所はダライ・ラマ法王の住居とナムギェル僧院がある丘の中腹を巡るコルラ(右繞道)の上。遺留品の中にチベット国旗があり、目撃者が炎の中で焼身者が「ダライ・ラマ法王に長寿を!」と叫んだことを聞いていることから、中国のチベット政策に対する抗議の焼身であったと思われる。未だ、身元は判明していない。
ダラムサラでは先の7月14日にベナレスで同じく焼身抗議を行い、22日に病院で亡くなったチベット中央大学学生テンジン・チュイン(19)の火葬が行われたばかりであった。遺体は遠くベナレスから運ばれ、最後はチベット国旗をかざすバイク隊と多くの車に先導されダラムサラに到着した。その後インド式のむき出しの火葬に大勢の亡命チベット人が集まり、悲しみを共有したのであった。今回の焼身抗議はテンジン・チュインの焼身が引き金と思われる。
三人の目撃者の話が伝わっている。一人は「気がついたときにはもう彼は燃えていた。すぐに助けを呼ぼうと走って、帰ってきたらもっと炎が大きくなっておりどうしようもなかった」という。「ガソリンを被っているのを見たがすぐに火を点けて燃え上がった。元気そうな若者のようだった」ともう一人。近くの養老院に住む女性は「コルラをしてるとき何か燃えてる気配を感じて振り向くと人が燃え上がっていた。彼が『ダライ・ラマ法王に長寿を!』と叫んだのを聞いた。怖くなり、助けを呼びながら走った」という。
本土以外での焼身抗議はこれで8人目。本土を含め158人になった。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)